【疾患概念】
軟部肉腫のなかで最も発生頻度の高い肉腫である.脂肪肉腫には臨床像の異なる組織亜型があり,それぞれの亜型の特徴や病態に応じて適した治療と経過観察が行われる.
【分類】
WHO分類では良悪性中間群(locally aggressive:遠隔転移をきたさない局所浸潤性の高い)の異型脂肪腫様腫瘍/高分化型脂肪肉腫,脱分化型脂肪肉腫,粘液型脂肪肉腫,多形型脂肪肉腫の4型に分類されている.
【頻度】
組織型別では高分化型が全脂肪肉腫の約40%を占め最多であり,次いで粘液型の順で,多形型は5%と頻度は低い.粘液型は30~40歳代の若年成人に好発するが,ほかの亜型は中年以降から高齢者に好発する.好発部位は四肢の深部軟部組織で,特に大腿部が半分以上を占める.脱分化型の多くは後腹膜に発生する.
【臨床症状】
大腿部に発生した場合の一般的な症状は,無痛性の軟部腫瘤であることが多い.高分化型は軟らかい腫瘤,ほかの型は弾性硬の腫瘤として触知される.後腹膜腔に発生した場合は腹腔内腫瘤としての症状を呈するまで発見が遅れることがあり,画像で偶然発見されることもある.
診断のポイント
造影MRIが有用である.高分化型はT1,T2強調像で高信号,内部に低信号で造影効果を示す比較的厚い隔壁様構造を認めることが多い.脱分化型は高分化成分と不均一な造影効果を示す部分が隣接して描出される.粘液型はT1強調像で低信号,T2強調像で高信号で内部は不均一なことが多い.生検で病理診断を行うが,組織型により治療方針が異なるため,診断が難しい場合には骨・軟部腫瘍専門の病理医へのコンサルトが望ましい.
専門病院へのコンサルテーション
脂肪肉腫は四肢のほか後腹膜腔や体幹に発生することも多く,診療科横断的な集学的治療が必要となる疾患である.この疾患を疑った場合には骨・軟部腫瘍専門医の勤務する専門病院へのコンサルテーションが望ましい
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