【疾患概念】
平滑筋肉腫は平滑筋への分化を示す肉腫である.悪性軟部腫瘍の5~10%を占め,脂肪肉腫,未分化多形肉腫(悪性線維性組織球腫)に次いで多く発生する.中高年に好発するが,まれに小児にも発生する.後腹膜・骨盤内に多くみられ(50%),四肢・体幹の深部,皮膚・皮下組織,下大静脈などの大血管などに発生する.四肢発生では大腿に好発する.
【臨床症状と病態】
四肢・体幹では発生部位に神経が近接していない場合,無痛性腫脹や腫瘤として発見されることがほとんどである.後腹膜や下大静脈に発生した場合は,腫瘍の増大・圧迫により腹部膨満や嘔気・嘔吐,腹痛が初発症状となることがある.骨盤内・大腿静脈に発生すると,下肢浮腫が初発症状となることがある.
四肢および体幹発生例では,局所再発が10~25%,遠隔転移が35~45%に生じる.5年および10年累積生存率はそれぞれ約65%,50%である.遠隔転移はほとんど肺であり,リンパ節転移はまれである.後腹膜発生例では,初診時より巨大腫瘍を形成したり,腹膜播種や肝転移を認めたりと根治的切除が困難な症例が多く,5年累積生存率は20%以下である.大血管発生例はまれであるが,早期から血行性転移をきたすため予後不良である.皮膚平滑筋肉腫は,中高年男性の頭皮に好発する.通常2cm以下で低悪性度の症例が多く,完全切除が達成できれば,予後は良好である.
必要な検査とその所見
本疾患を疑った場合は,可能な限り造影剤を用いた造影MRIで評価する.MRIで腫瘍の性状,サイズ,周囲組織への進展範囲などを評価する.平滑筋肉腫の遠隔転移は肺が最多であるため,胸部CTによる転移性肺腫瘍の検索を行う.FDG-PET CTでは,FDGの異常集積を示すことが多く,転移巣検索や治療効果判定に有用である.後腹膜・骨盤内・下大静脈発生の症例では,血管との関係を評価するために造影CT検査を考慮す
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