診療支援
治療

脊椎関節炎(総論)
Spondyloarthritis (review)
田村 直人
(順天堂大学 教授(膠原病内科))

【疾患概念】

 仙腸関節や脊椎などの体軸関節炎,末梢関節炎,付着部炎,ぶどう膜炎などの関節外症状,HLA-B27の関連などの特徴を有する慢性炎症性疾患群の総称である.主な疾患を病変が体軸関節優位か末梢関節優位かに分けて図6-5に示す.

【病態】

 腱や靱帯の骨への付着部が炎症の主座であり,HLA-B27など遺伝的要因に加えて,物理的ストレス,細菌感染,腸内細菌叢の異常などの環境因子が発症や病態に関与すると考えられている.慢性炎症による骨のびらん性病変および骨新生による付着部や靱帯の骨棘形成の両者がみられるのが特徴である.IL-23/IL-17,TNFなどの炎症性サイトカインが病態に関与するが,体軸性脊椎関節炎ではIL-23の関与は不明である.


問診で聞くべきこと

 脊椎関節炎や乾癬の家族歴,ぶどう膜炎や乾癬の既往,腹部症状や炎症性腸疾患の有無,最近の感染症(腸炎や尿道炎など)の有無,腰背部痛の性状などの問診が重要である.


必要な検査とその所見

 特異的な血液検査はない.CRPは陰性の場合も少なくない.HLA-B27は強直性脊椎炎の診断の補助となるが保険適用外である.罹患部位のX線などの画像検査を行う.単純X線像で仙腸関節に変化がみられなくともMRIで炎症所見を認めることがあるが,非特異的な変化の可能性に注意する.末梢の付着部炎の診断や鑑別には関節超音波が役立つ.


鑑別診断で想起すべき疾患

 感染症などの急性疾患,腫瘍性病変を除外する.体軸性では腰痛や単純X線像で骨硬化,骨増殖性変化を認める疾患,末梢性では関節リウマチをはじめとする関節疾患が鑑別の対象となる.


診断のポイント

 腰痛や末梢関節炎,付着部炎,指趾炎などが診断のきっかけとなる.体軸性脊椎関節炎では,炎症性腰背部痛といわれる,40歳未満に起こり安静で増悪し運動で軽快する慢性腰背部痛が特徴である.踵などの付着部炎,指趾炎の存在,皮膚や爪

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