診療支援
治療

ムコ脂質症
Mucolipidosis
小須賀 基通
(国立成育医療研究センター 診療部長(遺伝診療科)〔東京都世田谷区〕)

【疾患概念】

 ムコ脂質症は,ムコ多糖代謝異常症(ムコ多糖症)と糖脂質代謝異常症(スフィンゴリピドーシス)の双方の症状を呈する先天代謝異常症として命名された.ムコ脂質症Ⅱ型(ML2)およびⅢ型(ML3)の原因は,細胞内で生成されたリソソーム酵素に糖鎖修飾を行う,N-アセチルグルコサミン-1-リン酸基転移酵素の活性欠損もしくは低下である.糖鎖修飾をされないリソソーム酵素は,リソソーム内に取り込まれることができないため,結果的にリソソーム内ではほとんどのリソソーム酵素が欠乏した状態となり,未分解の糖脂質や糖蛋白が過剰蓄積する.従来は臨床症状から重症型をMLⅡ,軽症型をMLⅢと分類していたが,近年,原因遺伝子の解明により,重症度と遺伝子変異を組み合わせて命名することが提唱されている.またMLⅡは培養線維芽細胞の細胞質に多数の封入体(inclusion body)が認められたことから,inclusion-cell diseaseすなわちI-Cell(アイセル)病ともよばれる.

【病態】

 MLⅡは,乳児期からムコ多糖症Ⅰ型に類似した特徴的な顔貌,低身長,関節拘縮,角膜混濁,心弁膜症,精神運動発達遅滞,肝脾腫,特異的な単純X線所見(多発性骨形成不全)などを認め,循環器・呼吸器の合併症により10歳以前に死亡する.軽症型はMLⅢと診断され,発症年齢や病状の進行はMLⅡより緩徐であり,成人期まで生存する例もある.しかしながらムコ脂質症の臨床像は,軽症型から重症型まで連続した臨床型スペクトラムをとるため,厳密な分類は困難である.


必要な検査とその所見

 ①単純X線:ムコ多糖症のdysostosis multiplexとよばれるX線所見によく似た骨変化がみられる(図7-34).

 ②臨床検査:尿中ムコ多糖(ウロン酸)定量値は正常か軽度上昇であり,ムコ多糖症と異なり,明らかな過剰排泄や定性の異常は示さない

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