診療支援
治療

整形外科医に必要な筋・神経疾患の検査法
Clinical diagnosis of neuromuscular diseases for orthopaedic surgeons
石山 昭彦
(国立精神・神経医療研究センター病院 医長(小児神経科)〔東京都小平市〕)

【概説】

 整形外科診療で診る可能性のある神経筋疾患(脊髄前角,末梢神経,神経筋接合部,筋を病巣とする疾患群)に関する検査法について概説する.神経筋疾患の診断では臨床経過と診察による評価に加え,血液検査,電気生理学的検査,骨格筋画像検査といった非侵襲的な検査で鑑別診断を絞り込む.そのうえで,遺伝子検査または筋生検での病理診断により確定診断を行う.


1.血液検査

 血液検査で最も重要な項目は筋逸脱酵素で,代表的な項目がクレアチンキナーゼ(creatine kinase;CK)である.特に筋ジストロフィーや筋炎で高値を示す.それ以外にも先天性ミオパシーやミトコンドリア病でも高値を示すこともあるが,その程度は前者に比して軽度のことが多い.CK高値の程度は疾患により異なる傾向があり,例えばDuchenne型筋ジストロフィーでは,診断,診療を受ける年齢の乳幼児期では10,000U/L以上,Becker型筋ジストロフィーでは数百~数千U/L程度,顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーでは数百U/Lのことが多い.

 CK高値を示す場合には,AST,ALT,LDH,アルドラーゼも同時に高値を示すが,CKを測定しなかったことにより,当初は肝障害と評価されている場合もある.また,運動ニューロンの疾患でもCK値は軽度高値を示す場合があり,さらには感染症,激しい運動,筋肉注射後,痙攣発作後,打撲などによってもCK値は高値を示す場合があるので,CK値のみで筋疾患と決めつけない.CK値以外の検査では,筋炎を疑う際は自己抗体などの膠原病関連の項目を,代謝性・内分泌性ミオパシーを疑う場合には,それぞれに対応した血液検査を行う.なかでも乳酸,ピルビン酸の高値はミトコンドリア病の鑑別に有効である.


2.電気生理学的検査

【概要】

 電気生理学的検査には神経伝導検査と針筋電図がある.神経伝導検査では,疾患が神経原性か否か,さらにはそ

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