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治療

主幹動脈損傷
Damage of major arteries of the extremities
保科 克行
(東京大学 准教授(血管外科))

【疾患概念】

 通常主幹動脈といえば大動脈からの一次分枝のことを指すが,ここでは整形外科領域の末梢循環における主幹動脈として,四肢の動脈を中心に述べる.これらの動脈の損傷は,外的衝撃や手術操作によるものを念頭におく.いわゆる救急外傷においては,①鈍的衝撃による血管破綻(解離・閉塞),②弾痕などによる血管損傷,③骨折に伴う血管損傷,④刺傷による血管損傷などに分けられる.手術操作では,血管の牽引などによる解離は①に,鋭利な刃物などによる術中出血は④にあたる.③に関して,動脈損傷を伴いやすい整形外科的損傷を表9-1に挙げる.民間の(非軍事)動脈損傷の割合に関しては図9-1のような報告がある.

【臨床症状】

 動脈損傷はhard sign(確実)としての,拍動性出血・thrillの触知・損傷部位より末梢の拍動消失・血腫の膨大,そしてsoft sign(疑い)として,出血を示唆するデータ(Hbの低下など)・神経学的異常・対側に比して拍動微弱・近傍の骨損傷や刺傷などをもって診断する.損傷の結果として虚血となるが,上肢と下肢では虚血による症状が異なる.筋肉量の少なさと側副路の多さで上肢は下肢に比べて虚血耐性があるとされている.虚血によって起こる症状は,冷感・間欠性跛行(上肢でも跛行という)・安静時痛・壊死である.


必要な検査とその所見

 昨今は造影CTの画質もよく,またわが国では設備の整った施設が多いため,まずCTでの評価を行う.骨折や血腫などで血管の同定が困難な場合,血管造影を行う.もちろんこれらは患者のvitalが安定しているときに限る.血管造影を行う際には,診断と同時に損傷部位への塞栓・止血を念頭におく.


治療方針

 いずれも一刻も早い止血および血行再建が必要であり,血管の解剖と再建の知識が必要である.止血に関しては,もし損傷部位のprimary repairが不可能な場合,上記のように塞栓

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