【疾患概念】
手根不安定症とは手根骨の正常な配列を保ったまま負荷に耐えることができない状態と定義される.手根骨における力の伝達と動きに問題が生じるため,手根骨の配列異常や弾発,痛みを発生させ,放置すると関節症変化をきたすことが多い.
【病態】
手根不安定症の分類として,CID(carpal instability dissociative)と,CIND(carpal instability non-dissociative)がある.手根列を維持する手根間靱帯あるいは手根骨自体の骨性支持が破綻して生じる手根列内での配列異常をCIDと称する.一方,CINDは同じ手根列のなかでは異常がなく,外在性靱帯や橈骨などの手根骨外の骨性の支持の破綻により,橈骨と近位手根列または近位手根列と遠位手根列の間に位置異常を生じている状態である.
具体的には,舟状月状骨間靱帯解離や月状三角骨間靱帯解離,舟状骨偽関節はCIDに分類される.一方,手根間靱帯は正常で橈骨手根靱帯の弛緩や橈骨遠位端骨折変形治癒による橈骨と手根骨の相対的配列異常や,先天的な靱帯の弛みのため疼痛を伴った弾発を生じる手根中央関節不安定症はCINDに分類される.
【臨床症状】
手関節の運動時痛,弾発現象,脱臼感を認める.また靱帯や骨の損傷部位に限局した圧痛点を認める.
問診で聞くべきこと
外傷後の手関節痛に対しては,受傷時の手関節の肢位,外力の方向を明らかにし,慢性手関節痛については,職業およびスポーツ歴,疼痛を誘発する手関節の肢位やクリックを確認する.全身の関節弛緩の有無も重要である.
必要な検査とその所見
(1)X線診断
正しい肢位で撮った正側斜位の4方向X線画像を健側と比較する.正面像では,舟状月状骨間が3mm以上開大していないかを確認し(図15-13a図),carpal height ratioを測定する.舟状骨が異常に掌屈すると舟状
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