診療支援
治療

転移性脊椎腫瘍
Metastatic spine tumor
橋本 淳一
(山形大学医学部附属病院 教授(医療安全管理部))

【疾患概念】

 転移性脊椎腫瘍は悪性腫瘍の骨転移で最も頻度が高い.近年の放射線診断・治療やがん治療薬の進歩により,がん患者の相対生存率は大きく改善し,いわゆるがんサバイバーが増加している.がんと共存する生活の質が重要視されているため,転移性脊椎腫瘍を可及的早期に診断し,さらに集学的治療を患者協働で進めていくことが期待されている.


問診で聞くべきこと

 症状として最も関連するのは脊椎に関連する痛みである.脊椎転移は腰椎,胸椎,頚椎,仙骨の順に起こりやすい.転移性腫瘍による痛みには,傍脊柱部の局所的な痛みと,神経根性の痛みがあり,痛みの部位と性質を問診から詳細に把握する.“重篤な脊椎疾患の合併を疑うべきred flags”には,がんの既往以外に,予期せぬ体重減少,1か月以上改善のない場合,50歳以上の年齢などが指摘されており,痛みが出現する経緯に関する問診も重要である.


必要な検査とその所見

(1)画像診断

①単純X線:単純X線で診断可能な例は病態がすでに進行していることが多い.所見として,骨梁間型,造骨型,溶骨型のうち溶骨型と造骨型が混合していることが多い.椎弓根の溶骨による消失は正面像で“pedicle sign”といわれ,左右差を捉える.また椎体の正側面像では,椎体終板や皮質骨不連続性,骨融解による骨折がみられるが,骨粗鬆症性圧迫骨折との鑑別が困難なこともあるため疑わしい場合はさらに精査を進める.

②CT検査:全身評価法として使用頻度が高い.特に脊椎転移の診断では広範囲な形態異常の把握が可能である.局所の骨吸収や骨形成,骨梁構造の破壊を調べる.また原発巣,骨転移巣の検索以外にも,3D骨再構成は外科的治療法選択や,経時的な治療効果の判定に用いられる.

③MRI検査:骨破壊を描出しにくいが,骨転移巣の検出感度は高いため早期発見に有用であり,病変の進展を把握しやすい.また神経症状を呈している場

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