診療支援
治療

脊髄炎
Myelitis
名越 慈人
(慶應義塾大学 講師)

【疾患概念】

 脊髄炎は,脊髄における炎症性疾患の総称であり,原因によってさまざまな病態を呈する.代表的なものを列挙する.

 視神経脊髄炎,横断性脊髄炎,急性散在性脳脊髄炎,HTLV-1関連脊髄症,多発性硬化症,ウイルス性脊髄炎,梅毒性脊髄炎,放射性脊髄炎,HIV脊髄症,サルコイドーシス,特発性脊髄炎,自己免疫性疾患.

【臨床症状】

 一般的には,急性発症の神経症状を呈する.四肢のしびれや筋力低下,膀胱直腸障害などである.障害を受ける脊髄の部位により,症状は多彩である.また,疾患によっては軽度の発熱を認める.


問診で聞くべきこと

 脊髄炎では,急速に症状が進行する.そのため問診で,発症後数週~数か月で明らかに増悪傾向がみられる場合,脊髄炎を疑う.

 明らかな原因により脊髄炎を呈する場合もある.

・急性散在性脳脊髄炎→ワクチン接種1~4週後に発症することが多い.

・放射性脊髄炎→同部位への放射線照射歴がある.

・ウイルス性脊髄炎→基礎疾患に,糖尿病や免疫不全症候群が存在することがある.

・梅毒性脊髄炎,HIV脊髄症→梅毒およびHIVの感染の既往

・HTLV-1関連脊髄症→HTLV-1の感染の既往,出身地(九州・沖縄地方に多い)

 また疾患によっては脊髄以外の症状も訴える場合がある.

・視神経脊髄炎→視神経炎

・急性散在性脳脊髄炎→頭痛,嘔吐,意識混濁

・サルコイドーシス→脳神経障害,髄膜炎,肺病変

・自己免疫性疾患→筋・関節症状,発熱など


必要な検査とその所見

 MRIを用いた脊髄の評価が大切である.また脊髄炎に特徴的な所見を列挙する.

・脊髄の腫大がほとんどみられない.

・T2強調像の横断像で,高信号領域がスポット状に存在する.

・多発性硬化症の病態は,急性炎症性脱髄であり,側索や後索など脊髄の白質が障害を受ける.

・視神経脊髄炎は,脊髄の中心部に発症する.アクアポリン4に対する自己抗体が病原であるが,このアクアポリン

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