診療支援
治療

頚性頭痛と頚性めまい
Cervicogenic headache and cervicogenic dizziness (vertigo)
住谷 昌彦
(東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部 准教授)

【疾患概念】

(1)頚性頭痛(頚原性頭痛)

 骨性,筋性,および血管を含む他の軟部組織要素を含む頚部疾患や外傷による頭痛.骨性の頚性頭痛のメカニズムは頚椎(特に上位頚椎)の解剖学的異常(脱臼や骨折,腫瘍,椎間関節の狭小化と骨棘形成)により関連痛として頭痛が生じる場合と第2頚髄神経根の圧迫による大後頭神経痛がある.筋性の頚性頭痛では,僧帽筋や胸鎖乳突筋の筋疲労や筋膜の炎症の際に,これらの頭蓋骨の筋付着部(筋起始部)の痛みが生じることがある.頚部筋肉の筋疲労や炎症の原因として頚椎の変性(生理的弯曲の消失,椎間板高の減少)や外傷も挙げられる.また,僧帽筋腱膜を通過して皮下組織に神経線維を伸ばす大後頭神経が,筋性に圧迫され頭痛が生じることもある.その他の軟部組織を原因とするメカニズムでは,椎骨動脈の解離や頚部の回旋で椎骨動脈が閉塞することにより生じる頭痛,頚部膿瘍の頭側への進展で起こる頭痛などがある.

(2)頚性めまい

 頚部交感神経の障害(頚部交感神経からの異常信号による血管収縮),頚部固有受容器障害(前庭神経核への異常求心性入力),椎骨動脈の閉塞(頭部回旋による椎骨動脈の閉塞),片頭痛との関連(頚部三叉神経経路の活性化)などをメカニズムとして起こるめまい.

【臨床症状】

 頚部疾患や外傷の出現時期に一致して発症する頭痛やめまいで,頭痛やめまいを誘発する頚部運動を伴うことが多く,この頚部運動により反復性に頭痛やめまいが生じる.嘔気や冷汗を伴うこともある.頚性めまいでは,誘発する頚部運動を継続すると次第に減弱する浮動性(時に回転性)めまいが特徴的である.頚部構造またはその神経支配を診断的に求心路遮断(神経ブロック)すると,頭痛が消失または改善する.


問診で聞くべきこと

 頭痛およびめまい時の頚部痛の合併と頚部運動の可動域制限.頚部外傷歴と頚椎異常の病歴.椎骨脳底動脈循環不全の既往あるいはそれを示唆

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