診療支援
治療

腰痛・下肢痛のとらえ方/診断手順
Diagnosis of the low back pain and sciatica
波呂 浩孝
(山梨大学大学院 教授)

【疾患概念】

 2016年の国民基礎調査によると,腰痛は男性1位(92.2/1,000人),女性2位(118.2/1,000人)の有訴率であった.腰痛ガイドラインには,第12肋骨と殿溝下の間を腰部とし,急性は発症から4週間未満,亜急性を発症から4週間以上,3か月未満,慢性を発症から4週間以上としている.原因は椎間板や椎間関節,椎骨などの脊椎由来,神経根などの神経由来,のほかに,仙骨や骨盤,股関節に認めることもある.また,腎結石などの腎尿路系,子宮内膜症などの婦人科系,大動脈瘤などの血管由来,うつ状態などの心因性,など原因は多岐にわたる.脊椎や神経由来では,腫瘍,感染,外傷,神経症状を伴う脊椎疾患,などの原因がある.また,下肢痛は殿部から大腿,下腿へ放散することが多く,神経根や馬尾に原因があることが多い.欧米の総合診療医による腰痛の原因精査では約85%が原因不明である“非特異的”と報告されたが,日本における整形外科専門医による研究では全腰痛患者の78%で原因が特定しえたという報告がある.また,ガイドラインによると,腰痛は低体重,肥満,喫煙,飲酒,運動の習慣がない,心理社会的因子,と関連することが記載されている.


1.診察で最も重要な点

 さまざまな画像検査を実施して形態学的異常を見つけ出すことが重要ではなく,問診,診察,神経学的所見を詳細に調べて異常を見つけ出すことが病態解明で肝要である.


2.診察手順

 主訴,現病歴,家族歴,既往歴を問診する.次いで,視診,触診と診察を進める.問診では,疼痛の部位や種類,程度,過去の治療歴,疼痛の増悪・軽減の要因などを明らかにする.

【1】問診

(1)主訴について

 腰部は胸腰椎移行部から腰仙椎まで,あるいは脊柱正中から外側まで,広範囲であるので,どの部位に疼痛を自覚するかを詳細に問診する.腰椎正中部に限局している場合は骨折やすべり,分離が,傍脊柱部の場合

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