診療支援
治療

術後椎間板炎
Postoperative discitis
山田 圭
(久留米大学 准教授)

【疾患概念】

 腰椎手術(前方ないし後方手術)後に手術創部感染による炎症を発生し,椎間板に感染が発生したものをいう.腰椎の後方除圧手術で椎間板に操作を加えていなくても,炎症の程度,持続期間により椎間板まで炎症が波及することも少なくない.

【頻度】

 発生頻度は2~3%程度である.基礎疾患(糖尿病,血液透析,免疫抑制薬使用など)がある易感染性宿主は注意が必要で,インストゥルメンテーション手術は術後感染発生率が高い.

【臨床症状】

 腰椎術後1~2週間に腰痛,38℃以上の発熱を認める.膿瘍が硬膜外に進展し神経の圧迫がある場合には下肢痛や下肢脱力を伴うこともある.腰痛や下肢痛を必ずしも伴わないことも多い.


問診で聞くべきこと

 手術部に一致した痛み,下肢放散痛・脱力の有無,発熱時の悪寒戦慄の有無を確認する.周術期には呼吸器感染症,尿路感染症,胆道系感染の合併もあるので,呼吸器症状(咳,痰),排尿痛,腹部症状の有無を確認する.腰椎部の感染が髄膜炎を合併することがあるので,頭痛(割れるような強い頭痛)の有無も確認する.


必要な検査とその所見

(1)血液検査

 血液検査で,白血球数(白血球分画),CRP値,肝機能,腎機能を含む生化学検査,そしてできれば赤沈値(60分値)を確認する.

(2)細菌学的検査

 38℃以上の発熱を認めた場合には必ず,血液培養(静脈で可)を2セット採取し,血液培養を行う.また同時に尿を採取して細菌培養に提出する.創部から排液がある場合は滲出液(膿)の培養も行う.これらは,必ず抗菌薬投与以前に行うことが必須である.可能であれば病巣部(膿瘍や椎間板)の穿刺を行い,起炎菌を同定する.

(3)造影CT検査

 手術部の炎症巣では中心部の低吸収域と周囲の造影効果を認める.腰椎のみならず,胸部から骨盤にかけて同時に検査を行えば,創部感染以外の肺炎,胆道系感染,尿路感染症の否定にも役立つ.

(4)MRI(造

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