診療支援
治療

下腿コンパートメント症候群
Leg compartment syndrome
前川 尚宜
(奈良県立医科大学 講師(救急医学講座))

【疾患概念】

 外傷や循環障害を起点として,筋膜に囲まれたコンパートメント内の組織内圧上昇による微小循環障害に伴い発生する,筋・神経の障害である.筋体の壊死は6~8時間で不可逆な状態となることから,早期に対応しなければ著しい機能障害につながる.なお脛骨骨幹部骨折の2.7~15.6%に合併するとも言われ,開放骨折でも起こりうる.

【臨床症状】

 症状としては5P〔Pulselessness(脈拍消失,減弱),Pallor(蒼白),Pain(疼痛),Paresthesia(感覚異常),Paralysis(麻痺)〕であるといわれるが,5Pすべてを認めた時点では手遅れである.臨床症状としては初期に患肢の著しい腫脹を認め,鎮痛薬が効かない激痛を認める.次第にコンパートメント内の神経に一致した知覚障害を認めるようになり,末期には末梢動脈の拍動の減弱または消失,麻痺をみる.著しい腫脹と激痛をみた時点で,本症を考えることは重要である.


診断

 患肢の腫脹,感覚異常などの所見をみた際には,障害されたコンパートメント内の筋体を他動伸展させ疼痛を確認する,他動伸展試験(passive stretch test)をまず行う.補助診断としてコンパートメント内圧測定である.最近では動脈圧モニタールートに18~20Gの注射針を付け,注射針を各コンパートメント内に刺入測定する方法が行いやすい.正確に各コンパートメント内に注射針が刺入できているかの確認には,超音波検査を併用するとよい.測定は複数箇所での内圧を行うことが重要であり,また判断に迷う場合には,経時的に観察し測定を行うとよい.


治療方法

 臨床所見,ストレッチテスト陽性であれば,緊急に筋膜切開を考慮する.迷うときは,補助診断であるコンパートメント内圧を参考にする.コンパートメント内圧が40mmHg以上,あるいは拡張期血圧とコンパートメント内圧の差(ΔP)が30m

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