診療支援
診断

アルカローシス
Alkalosis
柴田 洋孝
(大分大学教授・内分泌代謝・膠原病・腎臓内科学講座)

緊急処置

【1】動脈血pH>7.60,血漿HCO3-濃度>40mEq/L程度の重篤な代謝性アルカローシスで,冠動脈疾患などの心疾患を基礎にもつ場合や,意識障害,けいれん,不整脈などの症状を呈する場合:希塩酸(HCl)液や塩化アンモニウム(NH4Cl)液もしくはCl含有量の多いアミノ酸製剤を投与する。

【2】心因性の過換気症候群による呼吸性アルカローシスの場合:紙袋再呼吸法を行う。鎮静薬の投与が効果的な場合も多い。

診断のチェックポイント

定義

❶アルカローシスとは,動脈血pHが上昇する病態で,pH7.45以上をアルカリ血症(alkalemia)とよぶ。

❷機序により血漿HCO3-濃度の蓄積による代謝性アルカローシスと,PaCO2の低下による呼吸性アルカローシスに分けられる。

❸単純な代謝性アルカローシスでは,HCO3-および動脈血pHともに上昇するが,他の酸塩基異常が合併すると必ずしも上昇しないこともあり,低カリウム(K)血症を伴うことが多い。

【1】病歴

❶嘔吐や利尿薬使用の病歴の有無が重要である。

❷低K血症の合併が多いため,不整脈,夜間尿,筋力低下などを確認する。

【2】身体所見

❶代謝性アルカローシス:自覚症状は非特異的で,身体所見は原因により異なる。

嘔吐,利尿薬治療などで体液量減少があると皮膚ツルゴールの低下,頸静脈圧の低下,起立性低血圧などがみられる

有効循環血液量が低下する心不全や肝硬変では,末梢の浮腫,腹水などがみられることがある。

低K血症に伴う不整脈が問題となる。

❷呼吸性アルカローシス:動脈血pHの急性変化が大きいために四肢知覚異常,手足痙縮,頭のふらつきなどを自覚することが多い。

【3】検査

❶代謝性アルカローシス:原因となる病態と維持機構の2つの過程を考慮する。低K血症,低クロール(Cl)血症を認めることが多い。

原因となる病態は,尿中Cl濃度によりCl反応性とCl抵抗性に

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