診療支援
診断

低ナトリウム血症・高ナトリウム血症
Hyponatremia, Hypernatremia
岩間 信太郎
(名古屋大学医学部附属病院・病院講師・糖尿病・内分泌内科)

緊急処置

【1】高度の低ナトリウム(Na)血症(120mEq/L以下など):意識レベルの低下やけいれんを呈し,脳浮腫による脳ヘルニアが生じうる。

❶低Na血症をすみやかに改善させるために3%高張食塩水を点滴投与する。

❷ただし,血清Na濃度を急速に上昇させると浸透圧性脱髄症候群が生じやすいので,血清Na濃度を頻回に測定し,その上昇は24時間で10mEq/L以下とする。

❸血清Na濃度が120mEq/Lに達するか神経症状が改善した時点で3%高張食塩水の投与は中止する。

❹補正前の血清Na濃度が110mEq/Lを下回る低Na血症,あるいは低カリウム(K)血症,低栄養,急性アルコール中毒,肝障害などを伴う場合は,よりゆるやかに血清Na濃度を補正する。

【2】高度の高Na血症(150mEq/L以上など):意識障害,けいれんを呈する場合は5%ブドウ糖液を用いて血清Na値の補正を行う。急速な補正に伴う脳浮腫を回避するため,補正は0.5mEq/L/時未満または24時間で10mEq/L以内とする。

診断のチェックポイント

定義

❶低Na血症:血清Na値が135mEq/L未満。

❷高Na血症:血清Na値が145mEq/Lを超える。

【1】病歴

❶低Na血症による症状:倦怠感,食欲低下,頭痛,悪心,意識レベルの低下,けいれん。血清Na濃度の絶対値が低いほど,また低下する速度が速いほど症状が顕著となる。

❷高Na血症による症状:頭痛,悪心,発熱,神経・筋の易刺激性亢進による筋緊張亢進および腱反射亢進,意識レベルの低下,けいれん。

❸聴取すべき病歴:食事摂取状況(経口Na摂取量を推察),使用薬剤,併存疾患の有無(心・肝・腎・内分泌・代謝疾患など),過去の検査結果(Na濃度の変化が急性または慢性かを判断)。

【2】身体所見:低Na血症の鑑別には体液量の評価が重要で,口唇や口腔粘膜の乾燥,皮膚ツルゴールの低下,浮腫,脈拍,血圧,

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