診療支援
診断

低リン血症
Hypophosphatemia
伊東 伸朗
(東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科)

緊急処置

【1】糖尿病性ケトアシドーシスでのインスリン加療や,神経性やせ症,飢餓への再栄養の際に生じた血清リン濃度1.0mg/dL未満の急性低リン血症:ヘモグロビン酸素飽和性低下やATP産生減少による意識障害,不整脈,心不全,呼吸不全などのリスクであり,点滴リン製剤(リン酸カリウム,腎不全があればリン酸ナトリウム)による血清リン濃度2.0mg/dLまでの緩徐な補正を検討する。

【2】過換気による呼吸性アルカローシスに伴う急性低リン血症や,慢性低リン血症:血清リン濃度1.0mg/dL未満でも緊急処置は不要。

診断のチェックポイント

定義:施設の基準値や年齢によるが,成人では一般に血清リン濃度2.5mg/dL未満を低リン血症という。

【1】病歴

❶くる病の家族歴,両親の血族婚(表1の1-①,2-①,3)。

❷骨粗鬆症,骨折(表1の1,2,3,4)。

❸テタニー(表1の2-①・②,5)。

❹腫瘍性疾患(表1の1-③,4,5)。

❺尿管結石,腎機能障害(表1の4)。

❻外出時間,過度な紫外線対策,きのこ・魚の摂取,ステロイド内服,下剤乱用,胃切除術(表1の2-②)。

❼飲酒,薬剤,重金属曝露歴(表1の1-④,2-②,3,4,6)。

【2】身体所見

❶くる病所見(低身長,O/X脚,脊柱弯曲,肋骨念珠,頭蓋癆,大泉門解離,漏斗胸,関節腫脹)〔→先天性低リン血症(表1の1-①・②,2-①,3)〕。

❷骨軟化症所見:骨痛,偽骨折,骨折,筋力低下,齲歯・慢性期合併症:前縦/後縦/黄色靱帯骨化症,変形性関節症,腱付着部位の石灰化〔→先/後天性低リン血症(副甲状腺ホルモン[PTH]および副甲状腺ホルモン関連ペプチド[PTHrP]関連低リン血症を除く)〕。

❸Trousseau徴候,Chvostek徴候〔→ビタミンD代謝関連低リン血症,hungry bone syndrome(表1の2-①,②,5)〕。

❹高カ

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