診療支援
診断

頭蓋内圧亢進
Intracranial Hypertension
井口 保之
(東京慈恵会医科大学教授・神経内科)

緊急処置

 頭蓋内圧亢進の原因疾患を検索しながら,頭部CT・MRIによる画像検査を進める。臨床症状および画像検査から脳ヘルニアの存在を疑う場合には,全身管理と局所脳治療を優先する。

【1】循環・呼吸管理:全身状態やバイタルサインが不安定な患者はICUに入室し麻酔科,集中治療科医師と併診。

❶頭部を正中挙上位。

❷人工呼吸器による管理を前提とした気道確保。

【2】高浸透圧薬投与:頭蓋内占拠性病変,頭部外傷時に有効。

【3】副腎皮質ステロイド投与:脳腫瘍時に有効。

【4】低体温療法,バルビツレート療法。

【5】脳室ドレナージ術,減圧開頭術。

診断のチェックポイント

定義:頭蓋内圧亢進とは,頭蓋内圧(髄液圧)が200mmH2Oを超えた状態である。特発性頭蓋内圧亢進とは,原因疾患がなく頭蓋内圧が250mmH2Oを超えた状態である。

【1】病歴:頭蓋内圧亢進の診断には,脳卒中,髄膜炎,転移性もしくは原発性脳腫瘍,頭部外傷など原因疾患を念頭に現病歴および既往歴,服薬歴の聴取が重要である。

【2】身体所見

❶頭痛:部位は持続性,非拍動性で主に頭部全体の疼痛を訴える。臥位,上肢の屈曲,咳嗽,息こらえで頭痛は増強する。

❷嘔吐:噴出性嘔吐を特徴とする。時に悪心を伴う。

❸うっ血乳頭:頭蓋内圧亢進を疑う場合に必須の診察。姿勢変化,咳嗽,息こらえに伴う一過性反復性視野障害の有無を確認する。

❹拍動性耳鳴:めまい,難聴を伴わない耳鳴。

❺頭部外傷(擦過傷,裂創,打撲痕)。

❻神経所見:意識障害,注意障害,行動障害の有無を確認する。脳神経麻痺では複視の有無(外転神経,動眼神経,滑車神経)を確認する。脳ヘルニアを併発した患者では,運動麻痺,Babinski徴候を評価する。

【3】検査:病歴および身体所見から頭蓋内圧亢進を疑った場合には,画像検査を実施する。頭蓋内占拠性病変による脳ヘルニアの危険がない場合に確定診断のために髄液検査を実施す

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