診療支援
診断

顔面筋の麻痺・けいれん
Facial Palsy and Facial spasm
松川 則之
(名古屋市立大学大学院教授・神経内科学分野)

[Ⅰ]顔面筋の麻痺

診断のチェックポイント

【1】病歴

❶問診による臨床経過

いつから動きにくいのか。

顔面神経麻痺以外の神経症状はあるか。

外傷機転はあるか。

❷急性発症,他の神経症候を伴う場合には,緊急に検査や処置を必要とする場合が多い。

急性経過:Bell麻痺,Ramsay Hunt症候群,脳血管障害,多発性硬化症など。

慢性経過:聴神経腫瘍,顔面神経鞘腫など。

外傷機転:外傷性(側頭骨骨折)。

【2】身体所見

❶顔面筋運動障害の分布と程度

重症度評価スケール(柳原法:40点法,図1)を用いて,視覚的に表情筋麻痺の程度および分布を評価する。安静時の非対称・ひたいのしわ寄せ・閉眼・頰をふくらます・イーと歯をみせるなど10項目に対して,正常4点・麻痺がある2点・全く動かない0点を基準として点数化する(判断が困難な場合のみ,中間の3点や1点を用いる)。10点以上で不全麻痺,8点以下で完全麻痺と評価される。

半側顔面全体の麻痺(末梢性),下部顔面に比較して上部麻痺が軽度(中枢性)。

Bell麻痺では遅発性症状が生じる場合がある(異所性再生もしくは混信伝導)。

病的共同運動(synkinesis):麻痺側顔面の不随意な筋けいれん,口を動かすと閉眼するなど他部位の不随意運動,食事をすると流涙するなどが生じることがある。

❷その他の神経症候学異常:構音障害・片麻痺などの存在(→中枢性病変)。

❸耳介・外耳道の水疱疹もしくは耳痛を伴う(→Ramsay Hunt症候群)。

❹鼓膜の炎症性変化を伴う:耳炎性。

❺聴力障害(難聴)や平衡機能障害が合併する場合

帯状疱疹(耳介・外耳道・口腔)もしくは耳痛を伴う(→Ramsay Hunt症候群)。

上記を伴わない(→脳幹梗塞,脳腫瘍,側頭骨腫瘍など)。

❻涙分泌障害・味覚障害・アブミ骨筋反射低下

それぞれの有無によって,顔面神経の障害部位診断を行う(図2表1

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