診療支援
診断

球麻痺症状(構音障害・嚥下障害を含む)
Bulbar Palsy
道勇 学
(愛知医科大学教授・神経内科学)

緊急処置

【1】球麻痺の主症状の1つは嚥下障害であり,誤嚥による気道異物,下気道感染などの呼吸器障害を招来していることも多く,迅速かつ適切な呼吸管理処置が必要となる。

【2】特に,窒息の可能性がある場合は可及的すみやかな気道確保の緊急対応が必須であるとともに,不顕性感染を含めた誤嚥性肺炎の併発が疑われる場合には,まずは感染症検索と治療を先行させることが重要である。

診断のチェックポイント

定義

❶球麻痺とは

狭義と広義:球麻痺の狭義は,脳幹の球部,すなわち延髄に位置する下位脳神経である舌咽神経,迷走神経,副神経(延髄部起始の内側枝),舌下神経の核性および核下性障害に起因する軟口蓋・咽頭後壁,喉頭ならびに舌の両側性運動障害である。しかし多くは顔面神経や三叉神経運動枝の障害も併存しており,広義にはこれらによる口唇,咀嚼筋の運動障害も含まれる。

偽(仮)性球麻痺:上記に対して,大脳皮質から延髄に至る錐体路の核上性障害によるものは偽(仮)性球麻痺として区別される。

❷主な症候:球麻痺による主な症候は嚥下障害と構音障害である。

嚥下障害:口腔内での食塊の形成および咽頭への送り込みに支障が生じ,咽頭から食道へと食塊を搬入させる一連の嚥下運動との不調和が起こる。これにより,食塊や唾液などが気道に流入し(誤嚥),場合によっては気道異物・窒息をきたす危険性が高まる。

構音障害:舌および軟口蓋・咽頭後壁の運動不全によって舌音ならびに口蓋音を主体とする音韻的歪みが生じる。これによって話す言葉が不明瞭,不正確となり,対話による相手への意思伝達に支障をきたす。

【1】病歴

❶嚥下障害について,以下に挙げる要点を念頭に問診を行う。麻痺が片側性の場合,患者は健側を利用して嚥下の工夫をすることが多いことにも留意する。

咀嚼困難感や顎の疲労感

飲み込みにくさの自覚と食物の形態による違い

食物の鼻腔への逆流

食事中や臥床時

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