診療支援
診断

関節痛
Arthralgia
松田 秀一
(京都大学大学院教授・感覚運動系外科学講座・整形外科学)

診断のチェックポイント

定義

 関節痛は,狭義には関節内の炎症や損傷による痛みであるが,患者の訴えとしての関節痛は,関節周囲の疼痛も含む。したがって,関節近傍の筋腱付着部の障害,滑液包炎,隣接の運動器疾患による関連痛なども含めて診断していく必要がある。

【1】病歴

❶痛みの部位:疼痛を訴える部位に何らかの病巣があることが多いが,時には病巣から離れた部位に痛みを感じることがある。股関節の疾患で膝周囲に痛みを生じたり,腰椎神経根由来の痛みで股関節や膝関節周囲の痛みを訴えることもあるので注意を要する。

❷いつから痛いのか

緩徐な発症:変形性関節症などの変性疾患の場合に多い。

急性発症:外傷のほか,結晶沈着性関節炎,感染などを疑う。

拍動性の疼痛:化膿性関節炎で時に生じる。

❸どのようなときに痛むか

動かし始めに痛みを感じる:変形性関節症で多い。

夜間に痛みが生じる:肩関節周囲炎で特徴的である。

安静時痛が強い:関節リウマチのような炎症性疾患を考える。

❹単関節の痛みか,多関節の痛みか:多関節に症状を認める場合は,リウマチ性疾患を鑑別する必要がある。

❺外傷,スポーツ歴:転倒などはもちろんのこと,階段を踏み外すなど軽微な外傷でも脆弱性骨折をきたすことがあるので丁寧に問診する。成長期においてはスポーツ障害による疼痛も多いので,スポーツの種類,練習時間・頻度も重要である。

❻既往歴・家族歴:既往歴のなかには,関節疾患と関連するものもあるので十分に聴取する。

全身性エリテマトーデスなどに対するステロイドの使用歴:大腿骨頭壊死症に関連している。

難治性糖尿病:患者は易感染性宿主であるので,感染を念頭において診断を進める。

悪性腫瘍の既往:転移性骨腫瘍に伴う疼痛の可能性があるので,必ず確認すべき既往歴である。

発育性股関節形成不全,外反母趾,多発性骨軟骨腫などの家族歴:家族性の発生が知られているので,家族歴

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