診療支援
診断

跛行
Limp
山本 謙吾
(東京医科大学主任教授・整形外科学分野)

診断のチェックポイント

定義:跛行とは正常歩行ができない状態であり,原因となる病態から疼痛,変形や関節拘縮(脚長差を含む),筋力低下(下位運動ニューロン病,筋疾患など),歩行運動制御系の障害(知覚麻痺を含む)によるものに大別することができる。

【1】病歴

❶いつから跛行に気づいたか:脳性麻痺や発育性股関節形成不全(先天性股関節脱臼)では処女歩行時より跛行がみられる。

❷思いあたる原因や契機はあるか:脳卒中,Parkinson病,外傷(関節靱帯損傷,骨折など),変形性関節症など。

❸どのような歩容か:自分の歩き方がどうおかしいか,他人に指摘されることはあるか,速く歩けない,転びやすいなど。

❹歩行時痛はあるか(疼痛回避性跛行)。

❺どのようなときに起こるか:特定の動作時に出現するものもある。変形性関節症では歩行開始時に跛行が目立つ。

❻跛行以外の異常はあるか:知覚鈍麻,筋力低下,しびれ,疼痛,上肢体幹の症状の有無。

❼どのような経過か。

【2】身体所見

❶下肢の疼痛部位の診察:圧痛,腫脹,発赤,熱感の有無。

❷下肢の変形の診察

関節の変形,関節可動域制限。

下肢長(spino-malleolus distance:SMD)を計測する:下肢長差が約2cmまでは跛行は認められないことが多い。しかしそれ以上の下肢長差がある場合,跛行を認めるようになる(硬性墜下性跛行)。

❸神経麻痺の有無を診察する:徒手筋力検査(manual muscle testing:MMT),知覚検査,反射の評価,病的反射の有無,Romberg徴候の有無などを評価する。

❹歩容の観察

立脚期が短縮しているかどうか観察する。疼痛を避けようとして,立脚期が短縮する歩容:疼痛回避性跛行。

股関節の殿筋内脱臼,中殿筋不全や股関節不安定性がある場合は,患側の足で荷重した際に,骨盤が反対側に傾く。同時に患側の肩が下がって身体が側方にゆれる:Duc

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