診療支援
診断

腹部膨満感
Sense of Abdominal Fullness
中島 淳
(横浜市立大学大学院主任教授・肝胆膵消化器病学教室)

診断のチェックポイント

定義

❶腹部膨満感の分類

物理的に測定可能な腹囲の増大や画像診断による消化管の拡張所見などの腹部膨隆があるもの:悪性疾患などに起因する消化管閉塞の初期の症状などの器質性疾患,まれではあるが器質性閉塞機転の見つからない偽性腸閉塞症,さらには腹水貯留や腸管ガスの過剰な貯留(small intestinal bacteria overgrowth:SIBO)などの物理的原因などによる(図1)。

特に器質性異常が見当たらないが膨満感を訴えるもの(機能性腹部膨満症):過敏性腸症候群,慢性便秘,食物アレルギー,消化不良症候群や月経前症候群などでみられる。

❷腹部膨満の原因:呑気症(空気を無意識に飲み込んでいること)が原因と考えられていたが,呑気症による腹部膨満はかなりまれである。

【1】病歴

❶まずは悪性疾患や器質性疾患の鑑別を念頭にいつから腹部膨満があるのか,体重減少や血便の有無,腹部手術歴,健康診断で肝疾患の指摘などがないか,月経異常の有無などを聞く。

❷腹痛や悪心・嘔吐などの消化管閉塞症状や過敏性腸症候群を疑わせる症状の有無,吃逆や放屁などの異常,便秘や下痢などの排便異常の有無,糖尿病などSIBOの基礎疾患になる既往歴などを聴取する。

【2】身体所見

❶腹部の所見

実際に外観上腹部に膨隆を認めるか,触診での鼓音確認などで貯留物は液体かガスか。

肝脾腫の有無。

暴行や婦人科臓器の腫大などの異常の有無。

❷腹部聴診:腸管運動の低下や亢進など異常の有無。

❸直腸指診:直腸癌などの検索をする。

【3】検査

❶画像検査

必須:腹部単純X線写真または腹部CT。腸管の拡張でガス貯留の評価,消化管閉塞では鏡面像の有無。その他の器質性疾患の検索に有効。

その他:必要に応じて大腸内視鏡などの消化管器質性病変の精査,腹部超音波検査など。偽性腸閉塞症の鑑別ではシネMRIが有用である。

❷血液検査

ヘモ

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