診療支援
診断

下血:黒色便と血便排泄
Bloody Stool
塩谷 昭子
(川崎医科大学教授・消化管内科学)

緊急処置

 バイタルサインを確認しショック徴候の有無を確認する。ショック徴候が認められれば,輸液,輸血などにより循環動態の安定化をはかる。止血治療としては,内視鏡下での止血,血管造影カテーテルによる血管塞栓術(interventional radiology:IVR),緊急手術が挙げられる(図1)。

【1】ショックが改善されないようなら,十分な説明のもと,血管造影による止血または開腹術が内視鏡に優先される。あらかじめ出血原因がわかっていて,内視鏡治療が可能であるなら内視鏡も選択に入る。

【2】バイタルサインが問題ない,あるいは改善されれば内視鏡治療を優先する。

診断のチェックポイント

定義

❶下血とは:消化管内に出血した血液の混じった便が肛門より排出されることをいう。下血は,タール便(melena)と血便(hematocheziaまたはbloody stool)とに分けられる。鮮血便とタール便とを区別するために,鮮血便を血便とよび,タール便のみを下血とよぶ傾向がある。

❷部位による分類:出血源の存在部位によって,口腔内からVater乳頭部までの出血は上部消化管出血,Vater乳頭部から回腸末端までは中部消化管出血,回腸末端より下部は下部消化管出血に分類される。

上部消化管出血:血液が消化液により変化し,タール状の黒色便となる。

下部消化管出血:消化液の作用を受ける前に便とともに排出されるため血便となる。血便は,一般的に下部消化管からの出血を示唆するが,出血量が多い場合には,中部あるいは上部消化管からの出血のこともある。

【1】病歴

❶便の性状および全身症状やその臨床経過に加え,既往歴,治療歴,家族歴,薬物使用歴,飲酒歴,海外渡航歴などの聴取により出血部位の特定と基礎疾患の診断を行う。

❷特に,消化性潰瘍の既往歴や,血液疾患・肝硬変など基礎疾患,および非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?