診療支援
診断

円柱尿・結晶尿(尿沈渣異常)
Urinary Cast/ Urinary Crystal (Urinary Sediment Abnormality)
伊藤 孝史
(島根大学診療教授・腎臓内科)

診断のチェックポイント

定義

❶円柱尿(図1表1)

尿が尿細管で停滞し,尿細管上皮細胞から分泌されるTamm-Horsfallムコ蛋白と少量のアルブミンが結合,濃縮,ゲル化し,遠位尿細管から集合管で鋳型となったものが硝子円柱である。

硝子円柱が形成される過程で,その上流から流れてくる赤血球や尿細管上皮などが取り込まれ,さらに崩壊や変性が加わり,上皮円柱,白血球円柱,顆粒円柱,赤血球円柱,ろう様円柱などが形成される。円柱の種類や性状により,腎・尿路疾患管の病態や重症度の把握が可能である(表1)。

❷結晶尿(図2表2)

腎臓から排泄された成分が腎・尿路系や排尿後の採尿容器内で物理化学的作用によって溶解度が低下し,析出・結晶化したものである。摂取した飲食物や体内での塩類代謝,酸塩基平衡などによって結晶量は変動する。

ビリルビン,ロイシン,チロシン,シスチン,2,8-ジヒドロキシアデニンなどは病気の場合にのみ出現し異常結晶とよばれる。その他の結晶性沈渣は健常人でもみられる通常結晶とよばれ,病的意義はない。

しかし,リン酸塩,尿酸塩,シュウ酸塩などの増加は,結石症などの診断,予防の観点から重要である。

原因疾患と頻度

【1】原因疾患

❶蛋白尿が主体の糸球体疾患:膜性腎症,微小変化型,糖尿病性腎症などでは,主に硝子円柱が出現する。それらがネフローゼ症候群を呈すると脂肪円柱がみられるようになる。

❷メサンギウム細胞が増殖する糸球体腎炎:IgA腎症,膜性増殖性糸球体腎炎,管内増殖性糸球体腎炎,半月体形成性糸球体腎炎などでは,赤血球円柱,白血球円柱が出現しやすい。ただし,円柱尿の糸球体病変に対する感度・特異度は決して高くないので,注意が必要である。

【2】頻度(日本腎臓学会が主導する「腎生検レジストリー」より)

❶IgA腎症が30~35%を占め最も頻度が高い。

❷ネフローゼ症候群全体では,微小変

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