診療支援
診断

減圧症(潜水病)
††
Decompression Sickness: DCS
高橋 毅
(国立病院機構熊本医療センター・院長)

診断のポイント

【1】問診:48時間以内の潜水。

【2】浮上後1~6時間以内での発症が半数以上。

【3】減圧症Ⅰ型(軽症):皮膚瘙痒,関節痛,筋肉痛。

【4】減圧症Ⅱ型(重症):知覚・運動障害,呼吸困難。

【5】動脈ガス塞栓症:浮上後10分以内に発症(重症)。

緊急対応の判断基準

【1】神経障害:知覚障害,運動障害,意識障害。

【2】呼吸障害:呼吸困難,肺水腫,気胸。

症候の診かた

【1】遊離したガスの部位により症状が異なる。

【2】皮膚所見:チアノーゼ・紅斑(大理石斑)。

【3】神経学的所見,理学所見が最も重要。

検査所見とその読みかた

 特異的な検査はない。問診と症状ですみやかに判断する。

確定診断の決め手

【1】気泡による局所の組織傷害を認める。

【2】脊髄損傷がMRIで確認できる場合がある。

【3】再圧治療で症状軽減(診断的治療)。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】内耳気圧外傷:回転性めまい,聴力低下,耳鳴。

【2】耳管通気不良:回転性めまい(一過性)。

【3】気胸():胸痛,呼吸困難。

【4】酸素中毒,窒素酔い。

【5】有害海洋生物による刺咬傷や中毒。

確定診断がつかないとき試みること

 確定診断をつけるのは難しい。検査に時間をかけず,オーバートリアージで早期治療を開始するべきである。

合併症・続発症の診断

【1】Ⅰ型で発症してもⅡ型に進行することがある。

【2】再加圧により症状悪化することもある。

【3】虚血再灌流障害:炎症関連物質の放出(2次増悪)。

予後判定の基準

【1】Ⅰ型は適切な治療でほぼ完治する。

【2】Ⅱ型は後遺症・死亡の危険性がある。

経過観察時の注意事項

【1】潜水後の航空機利用で発症することもある。

【2】潜水の数日後に発症することもある。

治療法ワンポイント・メモ

【1】高濃度酸素投与(10~15L/分)。

【2】生理食塩液の点滴(ブドウ糖は神経浮腫を悪化させる)。

【3】すみやかに専門医に相談。

【4】第2種高

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