診療支援
診断

HTLV-I関連脊髄症
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HTLV-1-Associated Myelopathy (HAM)
山野 嘉久
(聖マリアンナ医科大学教授・脳神経内科)

診断のポイント

【1】両下肢の痙性対麻痺(錐体路徴候)。

【2】血清・髄液中の抗ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)抗体陽性。

【3】高頻度に排尿障害・便秘を伴う。

【4】全国の患者数は約3,000人,発症平均年齢は40歳台で,1:3と女性に多い。

症候の診かた

【1】初期症状:歩行の違和感,足のつっぱり感,しびれ,転びやすい,頻尿などの症状で始まる。

【2】運動障害:胸髄の傷害による進行性の両下肢痙性対麻痺を認め,次第に歩行不能となり,体幹筋の筋力低下により寝たきりとなる場合もある。多くは緩徐進行性であるが(緩徐進行群),約10%の患者は,発症から2年以内に歩行不能となる場合(急速進行群)もあり,注意を要する。一方で,発症から10年以上でも歩行障害が軽微で進行がきわめてゆるやかな患者(進行停滞群)もまれに存在する。神経学的所見としては,両下肢の深部腱反射亢進,Babinski反射陽性,足クローヌス陽性などの錐体路徴候を認める。

【3】感覚障害:しばしば下肢のしびれ,疼痛を認め,時に触覚・温痛覚の低下を認める。

【4】膀胱直腸障害:約90%に排尿障害があり,病初期より出現することが多い。また,運動障害が軽度でも排尿障害が重度な場合もある。蓄尿障害,排出障害いずれも呈し,頻尿,尿失禁,排尿困難など症状は多彩である。進行すると約30%の患者は自己導尿を要する。

【5】自律神経障害:下半身の発汗障害,勃起障害は比較的多くみられ,まれに起立性低血圧がみられる。

検査所見とその読みかた

【1】HTLV-1感染の確認

❶スクリーニング検査:HTLV-1関連脊髄症(HAM)を疑ったらまず血清中のHTLV-1抗体のスクリーニング検査(CLEIA,CLIA,ECLIA,PA法)を実施する。

❷確認検査:❶で陽性であった場合は,必ず確認検査(ウエスタンブロット法あるいはLIA法)を実施,陽性であればHTLV-1感

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