診断のポイント
【1】発症年齢が10~49歳の間。
【2】脳MRIで散在性に脱髄斑を認める。
【3】家族歴と既往歴に特記事項なし。
【4】血液炎症反応がない。
【5】意識障害やけいれんなどの脳症なし。
症候の診かた
【1】視力低下:多発性硬化症(MS)の症状として最も頻度の高い症状の1つ。視神経炎による。視力低下,視野欠損,中心暗点,かすみ目などを呈する。
【2】複視:内側縦束の病変による核間性眼筋麻痺の頻度が高く,側方視時に複視が認められる。
【3】Lhermitte徴候:頸を前屈させた際に背中から下方に電撃痛が放散する。脊髄病変(後索)の存在を示唆する。
【4】運動障害:脱力,つっぱりなど。多くは脊髄あるいは脳幹の錐体路に生じる病変による。
【5】感覚障害:しびれ,感覚鈍麻,位置覚障害など。多くは脊髄の後索あるいは脊髄視床路の病変による。脊髄半側症候群で病変以下の左右の感覚障害の解離が特徴的である。
【6】小脳失調:眼振,断綴性言語,企図振戦はMSにおけるCharcotの3徴とよばれるが,日本人のMSで3徴がそろう頻度は高くない。
検査所見とその読みかた
【1】MRI
❶診断時に,頭部(脳)のT1強調画像,T2強調画像,FLAIR画像,ガドリニウム造影後のT1強調画像の水平断,FLAIR画像の矢状断が有用である。
❷比較的急性期の病変で結節状あるいはリング状やオープンリング状の造影効果がある。
❸脳室周囲の病変は,矢状断で脳室に対して垂直方向に白質へ広がる。
❹脊髄はT2強調画像の矢状断と水平断が有用である。
❺急性期には結節状あるいはリング状に造影されるので,ガドリニウム造影後のT1強調画像も有用である(図1図)。
❻脳室周囲,大脳皮質直下あるいは皮質,テント下,脊髄のうち,2か所以上でMRI病変が認められればMSとしての空間的多発性の証明となる。
❼また,時期をおいたMRIで新規病変が出現したり,造影される