診療支援
診断

封入体筋炎
††
Sporadic Inclusion Body Myositis (sIBM)
青木 正志
(東北大学教授・神経内科)

診断のポイント

【1】40歳以上,高齢者に多い。

【2】大腿四頭筋の筋萎縮。

【3】手指の屈筋の筋力低下。

【4】比較的緩徐な進行。

【5】診断には筋生検が必要。

緊急対応の判断基準

 通常は急激な悪化はみられないが,嚥下障害による誤嚥や転倒・骨折に注意が必要である。

症候の診かた

 中高年に発症する特発性の筋疾患である。左右非対称の筋力低下と筋萎縮が大腿四頭筋や手指・手首屈筋にみられる。

検査所見とその読みかた

【1】血清のクレアチンキナーゼ(CK)値:正常か軽度の上昇にとどまり,通常は正常上限の10倍程度までとされる。

【2】針筋電図:随意収縮時の早期動員(急速動員),線維自発電位/陽性鋭波/(複合反復放電)の存在などの筋原性変化を認めるが,高振幅長持続時間多相性の神経原性を思わせる運動単位電位が高頻度にみられることに注意する。

確定診断の決め手

【1】厚生労働省による封入体筋炎の診断基準を参考にする。

【2】診断の確定のためには,筋生検によって筋内鞘への単核球浸潤を伴っており,かつ以下の所見を認めることを確認する必要がある。

❶縁取り空胞を伴う筋線維。

❷非壊死線維への単核球の侵入や単核球による包囲。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)():上肢の遠位筋障害をきたすことから,鑑別として重要である。

【2】多発性筋炎()などの炎症性筋疾患:筋病理所見を確認する必要がある。

【3】ほかの縁取り空胞を伴う筋疾患:筋病理にて他の縁取り空胞を伴う筋疾患〔眼咽頭型筋ジストロフィー,縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー多発性筋炎()〕を除外することが必要となる。

確定診断がつかないとき試みること

【1】深指屈筋の針筋電図所見がALSとの鑑別に有用であったとする報告もあり,被験筋に追加することが望ましい。

【2】骨格筋CTやMRIも他

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