診療支援
診断

神経痛
Neuralgia
濱野 忠則
(福井大学准教授・診療教授・病態制御医学講座内科学(脳神経内科))

 末梢神経に由来する疼痛を一般に神経痛とよぶ。痛みは発作性である。

[Ⅰ]三叉神経痛

診断のポイント

 診断基準を表1に示す。

【1】中年期以降に発症する。女性に多い。

【2】一側三叉神経支配領域,特に第Ⅱ,Ⅲ枝領域(口唇,頰,歯肉,下顎)に限局したピリッとした電撃痛を反復する。

【3】鼻唇溝,オトガイの狭い領域に痛みの誘発点を有することが多い。

【4】洗顔,髭剃り,会話,歯磨きなどの些細な刺激で誘発される。

【5】痛みは,昼夜を問わず数週間は頻回に出現。数分の1秒~2分以内に消失し,間欠期は無症状。

症候の診かた

【1】激痛のため,罹患側のしかめっ面をしばしば誘発する。

【2】典型的(特発性)三叉神経痛:第Ⅱ,Ⅲ枝領域の疼痛が大半。明らかな顔面感覚鈍麻はない。

【3】症候性三叉神経痛:顔面感覚鈍麻を伴い,第Ⅰ枝領域にも症状を呈しうる。

検査所見とその読みかた

【1】典型的三叉神経痛:MRI,MR アンギオグラフィ(MRA)により橋の三叉神経根と上小脳動脈や前下小脳動脈などの血管との接触を確認する(図1)。

【2】症候性三叉神経痛:三叉神経の走行路につき,Gasser神経節,正円孔(第Ⅱ枝),卵円孔(第Ⅲ枝),海綿静脈洞(第I,Ⅱ枝),上眼窩裂(第I枝)を含む中頭蓋窩を中心にMRIで悪性腫瘍を重点的に検索する。

【3】血液検査(炎症所見,自己抗体,ウイルス抗体,腫瘍マーカー):炎症性疾患,悪性腫瘍など症候性三叉神経痛の原因疾患をチェックする。

確定診断の決め手

 診断は[症候の診かた]の神経症候によるが,典型的(特発性)三叉神経痛と,症候性三叉神経痛を各種検査により鑑別する。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

 症候性三叉神経痛の場合。

【1】帯状疱疹():皮疹

【2】腫瘍(三叉神経鞘腫悪性リンパ腫聴神経鞘腫髄膜腫):MRIで三叉神経の入り口付近や,中頭蓋窩に造影効果を伴う占拠性病変を認める。

【3】

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