診断のポイント
【1】通常一肢の筋力低下や構音障害で始まり,麻痺や筋萎縮が数か月単位で隣接する部位に拡大する。両上肢の近位部(flail arm型),四肢遠位での発症(偽性多発神経炎型)や痙性四肢麻痺が遷延する病型もある。体重減少がほぼ必発である。
【2】脳幹,頸髄,胸髄,腰仙髄由来の随意運動に関する筋群の萎縮と筋力低下,上位・下位運動ニューロンの徴候をとらえる(表1図)。診断は理学所見と筋電図により行う。診断基準は,改訂El-Escorial診断基準やUpdated Awaji基準(表2図)が使用される。
症候の診かた
【1】筋萎縮と筋力低下:徒手筋力テストによって筋力を評価し,全身の筋萎縮を観察する。特に舌における筋萎縮や,手内筋において母指球筋と第一背側骨間筋(図1図の➡)の萎縮に比べ,小指球筋(図1図の⇨)の萎縮が目立たないsplit hand atrophyはALSを示唆する所見である。舌萎縮が進行すると表面の凹凸が目立つようになり(図2図),挺舌が不良となる。
【2】反射:ALSにおいて,下位運動ニューロンによって深部腱反射は減弱することがある。この際「筋力低下のわりには腱反射が保たれている」点や病的反射の有無に留意する。Babinski徴候はALSの半数程度しか出現しないとされる。脳神経系では下顎反射,眼輪筋,口輪筋反射亢進の有無を診察する。
【3】線維束性収縮(fasciculation):前角細胞の障害に基づく運動単位支配筋群の細かい不規則な収縮であるが,ALSでは安静時や軽度の運動後に頻回に出現する。舌や第一背側骨間筋,前腕筋群,大胸筋などで認めやすい。
検査所見とその読みかた
【1】神経伝導検査:運動神経伝導検査では複合運動活動電位の振幅が低下するが,神経伝導速度は正常である。感覚神経伝導検査は合併症がない限り振幅,伝導速度とも正常である。
【2】針筋電図:前角細胞の減
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