診療支援
診断

痙性対麻痺
††
Spastic Paraplegia
瀧山 嘉久
(山梨大学大学院教授・神経内科学)

診断のポイント

【1】下肢がつっぱり歩きにくい,階段を降りにくい,靴の一部がすり減るなどの病歴を聴取する。家族歴がある場合には遺伝形式を推定することが重要である。

【2】神経学的所見:下肢の腱反射亢進,膝・足クローヌスや病的反射(Babinski徴候など)の出現,下肢痙縮,痙性歩行を観察する。

【3】遺伝性痙性対麻痺(hereditary spastic paraplegia:HSP)は臨床的に純粋型と複合型に分けられる。

❶純粋型:通常下肢の痙縮と筋力低下のみを呈するが,軽度の振動覚低下,膀胱直腸障害,上肢の腱反射亢進を伴うことがある。

❷複合型:これらに加えて,末梢神経障害,精神発達遅滞,けいれん,網膜色素変性症,魚鱗癬などの随伴症状を呈する場合がある。

【4】「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」に変性疾患としての痙性対麻痺についての診断基準が提唱されている(表1)。痙性対麻痺はあくまでも症候名であり,痙性対麻痺が神経変性によるものか,あるいはそれ以外の原因によるものかを鑑別する。

症候の診かた

【1】中枢神経系における腱反射中枢を理解して,腱反射所見,病的反射・筋萎縮・感覚障害(感覚解離を含めて)・膀胱直腸障害の有無により,脊髄の高位診断が可能かどうか推定する。

【2】痙縮の有無,程度の観察は臥位で行うのがよい。

【3】末梢神経障害を伴っている場合には,膝蓋腱反射は亢進しているが,アキレス腱反射は低下~消失していることがある。

【4】疾患の経過中に痙縮が認められなくなることがある(Charlevoix-Saguenay型痙性失調症で末梢神経障害が進展する場合や,脊髄動静脈奇形で弛緩性麻痺へと移行する場合など)。

検査所見とその読みかた

【1】脊椎単純X線,脊椎CT,脊椎・脊髄MRI(単純,造影):病変の局所診断と原因診断に有用であり,腫瘍,多発性硬化症,視神経脊髄炎関連疾

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