診断のポイント
【1】小脳性または脊髄性の運動失調を主症状とし,小脳や脊髄の神経核や伝導路に病変の主座をもつ神経変性疾患である(表1図)。
【2】発症年齢は通常40~60歳台であり,罹病期間は5~20年のことが多い。わが国では孤発性のものが約67%を占める。
【3】発症率に男女差はない。
【4】遺伝性の場合,父親が罹患していると,子の発症が早まり臨床症状が重症化する(paternal anticipation)。
症候の診かた
【1】孤発性脊髄小脳変性症(SCD):多系統萎縮症(multiple system atrophy:MSA)を除いて小脳皮質萎縮症(cortical cerebellar atrophy:CCA)が主である。
❶CCAは,中年以降に発症し,ほぼ一貫して純粋な小脳性運動失調を示す。
❷50歳台に歩行障害で初発し,次第に構音障害,眼振,筋緊張低下が加わることがあるが,Parkinson症状や自律神経症状は目立たない。
❸進行は緩徐で生命予後はよく,発症10年後でも70%はADLが自立している。
【2】遺伝性脊髄小脳変性症
❶Spinocerebellar ataxia (SCA) type1:東北・北海道に多く,西日本ではほとんどみられない。小脳失調症に加え,腱反射亢進,嚥下障害,筋肉のやせ(amyotrophy),外眼筋麻痺を比較的高頻度に認める。
❷SCA type2:キューバでの多発地帯が有名であるが,わが国からの報告もまれではない。
■小脳失調,slow saccades,核上性眼球運動障害,深部腱反射減弱ないし消失,振動覚低下,軽度知能低下などに要約される。
■眼振はまれで,自律神経障害も少なく,軸索性末梢感覚神経障害も特徴的である。
❸SCA type3(Machado-Joseph病:MJD):遺伝性SCDのなかで最も頻度が高い。
■小脳失調,錐体路および錐体外路症状,筋
関連リンク
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