診断のポイント
【1】発症の分布は20歳台と60歳台の二峰性。
【2】きわめて緩徐進行性の両上肢の姿勢時・運動時振戦。
【3】他疾患などによる二次性振戦を除外する。
【4】振戦以外の神経所見を認めず,画像検査にも異常はない。
【5】家族歴がみられることが多い。
症候の診かた
【1】振戦は身体部分が不随意に一定のリズムをもって反復する単純往復運動で,静止時,姿勢時,運動時に観察する。
【2】両上肢前方挙上で手指や手首に少し左右差のある4~12Hzの姿勢時振戦を認める。
【3】運動時振戦は指鼻指試験,書字・渦巻き描きで診る。
【4】静止時振戦がみられることもあるが,姿勢・動作により増強。
【5】精神的緊張で増強,飲酒により軽減。
【6】振戦は頭部,声,下顎,下肢にも出現しうるが,声のみ,下顎のみ,起立時の下肢のみの振戦は除外。
【7】特定の肢位や作業時のみ出現する振戦(書字振戦,音楽家振戦など)も除外。
検査所見とその読みかた
【1】血液生化学検査:甲状腺機能,セルロプラスミン,銅は正常。
【2】頭部画像検査:頭部CT・MRIに異常はない。
確定診断の決め手
【1】3年以上持続する両上肢の姿勢時・運動時振戦。
【2】振戦以外の神経所見を認めない。
【3】心因性,薬剤性,外傷性,内分泌異常などが除外される。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】Parkinson病(→)
❶左右差のある4~6Hzの静止時振戦で,動作・姿勢時に抑制される。
❷姿勢時に消失した振戦が,その姿勢を保っていると10秒程度して再び現れることがある(re-emergent tremor)。本態性振戦では姿勢後2秒以内に振戦が出現するのが鑑別点。
❸無動・筋強剛などの運動症状,自律神経症状・嗅覚低下などの非運動症状を伴う。
【2】薬剤性振戦
❶向精神薬のみならず,気管支拡張薬,胃腸薬,抗菌薬など,多くの薬剤が振戦の原因となる。
❷服用薬の副作用記載を照査し,被疑