ポルフィリン症はいずれかのヘム合成系関与酵素の異常に起因する。急性神経症候を呈する急性間欠性ポルフィリン症(AIP)はポルフォビリノーゲン(PBG)デアミナーゼ遺伝子異常により常染色体優性遺伝する。
診断のポイント
【1】間欠的,発作的に消化器症候,神経症候,精神症候を呈する原因不明例の鑑別に本症を加える。
【2】誘引:バルビツール系薬のほか,抗けいれん薬,サルファ薬,経口避妊薬ほかの薬物の一部,飲酒,感染,月経,妊娠,飢餓,喫煙,心理的ストレスなど。
【3】同様の家族歴:成人女性に多く,思春期前,閉経後にはまれ。
【4】尿中δアミノレブリン酸(ALA),PBG増加。
緊急対応の判断基準
初期治療無効,誘因解除不可,呼吸筋麻痺合併例,手術適応例はICU管理,ヘム製剤投与可能な施設へ。
症候の診かた
【1】急性発作は不安や多動,不眠などの行動変化を含む前駆症状で始まる。
【2】典型例では腹痛発作のあと,数日~数週を経て神経症候,精神症候を呈するが,腹部症状と神経症候の同時発症例,腹部症状を伴わない例もある。
【3】自律神経症候:急性腹症様腹痛,嘔吐,便秘,下痢,頻脈,血圧上昇,発汗異常などがみられる。
【4】神経症候:知覚障害,筋肉痛,脱力,球麻痺,けいれん発作がみられる。
❶運動優位末梢神経障害の鑑別診断に本症を含める。
❷重症例は上肢近位筋優位筋力低下のあと,四肢麻痺,球麻痺,呼吸筋麻痺を呈する。
❸錐体路徴候,小脳症候,一過性失明,意識障害もみられうる。
【5】精神症候:幻覚,妄想,ヒステリーなどがみられるが,しばしば動揺性である。
検査所見とその読みかた
【1】尿中ポルフィリン体
❶急性期に尿中ALA,PBGは増加する(基準値の10~100倍)。間欠期(寛解期)はほぼ正常である。
❷新鮮尿は褐色調であるが,放置すると酸化されコプロポルフィリンに変化しポートワイン色になる。
❸紫外線照射で赤色蛍光を発する。
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