診療支援
診断

橋本脳症
††
Hashimoto's Encephalopathy
米田 誠
(福井県立大学看護福祉学部教授・看護学科)

診断のポイント

【1】平均60歳(30歳台と80歳台に二峰性のピーク)。女性に多い。

【2】慢性甲状腺炎(橋本病)の既往があるか,抗甲状腺抗体(抗TG,抗TPO)が陽性である。

【3】さまざまな精神・神経症状(脳症)を呈する。

【4】ステロイドなどの免疫療法が奏効する。

症候の診かた

【1】精神・神経症状:意識障害,幻覚・妄想,認知症,ふるえ,けいれん,小脳失調を呈する(頻度順)。

【2】症状の変動あり。

【3】甲状腺腫を認める(一部)。

検査所見とその読みかた

【1】抗甲状腺抗体:陽性である。

【2】甲状腺機能:大部分で正常,もしくは軽度の異常にとどまる。

【3】抗N末端αエノラーゼ(NAE)抗体:陽性である(特異性が高い)。

【4】髄液検査:脳脊髄液での細胞増多はまれ。蛋白上昇は軽度~中等度。

【5】脳波と脳SPECT:脳波異常と脳SPECTでの血流低下が高頻度。

【6】頭部MRI:異常は低頻度(ただし,脳のびまん性白質病変や側頭葉病変はまれではない)。

確定診断の決め手

【1】橋本病の存在(潜在性患者を含む)。

【2】脳症が存在する。

【3】脳MRI変化に乏しい反面,高率に脳波異常と脳SPECTでの血流低下を認める。

【4】血清の抗NAE抗体が陽性である。

【5】免疫療法(主にステロイド)が奏効する。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】急性脳炎型:粘液水腫性脳症ウイルス性脳炎(),非ヘルペス性辺縁系脳炎,各種代謝性脳症。

【2】慢性精神病型:統合失調症(),各種認知症,うつ病(),双極性障害()。

【3】小脳失調型:脊髄小脳変性症(),薬剤性小脳失調症ウイルス性小脳炎急性散在性脳脊髄炎()。

【4】その他(まれ):Creutzfeldt-Jakob病Parkinson病(),脳血管障害。

確定診断がつかないとき試みること

【1】ステロイドを投与する。

【2】血清の抗NAE抗体を測定する。

合併症・続

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