診断のポイント
【1】膿瘍の確認:膿瘍形成部位が浅ければ,局所所見により比較的容易に診断できる。深部膿瘍の場合は局所所見に乏しい場合もあり,画像診断(CT,MRI)を要する。
【2】膿瘍の部位(広がり)の把握
❶肛門周囲皮下膿瘍
❷粘膜下膿瘍
❸低位および高位筋間膿瘍
❹坐骨直腸窩膿瘍
❺骨盤直腸窩膿瘍
❻腟,尿道への病変波及の可能性
【3】原因の同定:痔瘻からの進展のほかに外傷(手術も含む),異物などがある。
【4】合併症の有無:炎症性腸疾患(Crohn病,潰瘍性大腸炎),結核,糖尿病,白血病など。
症候の診かた
【1】膿瘍形成が表層の場合は,肛門部局所所見(腫脹,発赤,疼痛,圧痛)を把握する。
【2】局所所見に乏しく,発熱,排便痛,排便困難,直腸肛門部違和感などを訴える際には深部膿瘍を疑う。
【3】全身性合併症の有無は,治療方針や経過にも影響することからきわめて重要であり,問診を十分行う。
検査所見とその読みかた
【1】視診:膿瘍の部位(特に12時方向か否か),広がり,手術創の有無,他の肛門病変(痔瘻,皮垂,潰瘍など)。
【2】直腸指診:疼痛により困難な場合は最低限にとどめる。圧痛・硬結の部位,広がり,索状物(瘻管)の走行,狭窄の有無。
【3】ほとんどの症例で白血球増多,CRP上昇を伴う。
【4】肛門鏡検査:膿の排出,粘膜病変の有無。
確定診断の決め手
【1】肛門部痛と局所所見。
【2】切開排膿による膿汁の確認。
【3】炎症所見とCT,MRIによる膿瘍の同定(図1図)。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】肛門周囲皮膚病変〔化膿性粉瘤(→),化膿性汗腺炎(→),バルトリン腺炎,毛巣洞炎〕
❶膿瘍の部位。
❷肛門管とのつながり。
【2】痔瘻癌,肛門管癌
❶硬結,腫瘤を認める。
❷粘液の貯留,排出。
❸細胞診,生検。
【3】Crohn病(→)
❶消化管病変。
❷皮垂,多発痔瘻,肛門狭窄,肛門潰瘍。
【4】壊疽性筋膜炎(Fournier's
関連リンク
- 今日の診断指針 第8版/粉瘤(アテローマ)
- 今日の診断指針 第8版/化膿性汗腺炎
- 今日の診断指針 第8版/Crohn病
- 今日の診断指針 第8版/HIV感染症/AIDS(妊婦感染を含む)
- 今日の診断指針 第8版/結核
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/臀部慢性膿皮症
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/外歯瘻
- 臨床検査データブック 2023-2024/肛門周囲膿瘍,痔瘻
- 新臨床内科学 第10版/1 上皮性腫瘍
- 新臨床内科学 第10版/炎症,感染症
- 新臨床内科学 第10版/4 横隔膜下・ダグラス窩膿瘍
- 今日の診断指針 第8版/痔瘻
- 今日の診断指針 第8版/裂肛
- 今日の小児治療指針 第17版/小外科
- 今日の診断指針 第8版/口蓋扁桃炎
- 今日の小児治療指針 第17版/慢性中耳炎,中耳真珠腫