診断のポイント
【1】上腹部に急性の腹痛発作と圧痛を認める。背部への放散,嘔気・嘔吐などを伴うこともある。
【2】血中または尿中にアミラーゼやリパーゼなどの膵酵素の上昇を認める。
【3】超音波(US),CTまたはMRIで膵腫大,膵実質内部不均一,膵周囲への炎症の波及や液体貯留を認める。
【4】アルコール性膵炎や胆石性膵炎の頻度が高く,飲酒歴や画像検査での胆石の有無に注意が必要。
【5】急性膵炎の診断基準を参照(表1図)。
緊急対応の判断基準
【1】急性膵炎と診断したら,直ちに全身モニタリング,基本的治療(輸液など)を始めると同時に,予後因子スコア,造影CT Grade(表2図)により重症度を判定する。
【2】重症急性膵炎の死亡率は高く,ICU管理,インターベンション治療や内視鏡治療などが可能な医療施設への移送を検討する。
症候の診かた
【1】腹痛
❶急性発症の上腹部を中心とした腹痛と圧痛。90%以上が腹痛を訴える。
❷背部に放散することが多く,胸膝位によって軽快する。
❸腹痛のない患者はまれであり,意識障害のある患者では注意が必要。
❹急性膵炎は急性腹症で来院する患者の2~3%にすぎず,他疾患の除外も重要である。
【2】腹痛以外の症状
❶嘔気・嘔吐,食欲不振,発熱,腸蠕動音の減弱などの頻度が高い。
❷呼吸困難,意識障害,ショック症状,出血傾向がみられれば重症である。
❸Grey-Turner徴候(側腹壁),Cullen徴候(臍周囲)などの皮下出血斑は急性膵炎に特徴的な臨床徴候であるが,その出現頻度は低い。
【3】全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS),播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC),多臓器不全(multiple organ failure:MOF):急性膵炎が