循環器疾患は,高血圧,糖尿病,メタボリックシンドローム,脂質異常症,喫煙などの危険因子から,動脈硬化を基盤として心筋梗塞,さらに心不全・不整脈を引き起こす一連の心血管病の連鎖としてとらえられる。わが国では生活習慣の欧米化と人口の高齢化によって循環器疾患が増加している。循環器疾患の診断においては,従来からの症状・身体所見や心電図,胸部X線の重要性は変わりがないものの,超音波,CT,MRI,核医学検査などを組み合わせたマルチモダリティ診断による病態のより正確かつ詳細な把握が可能となっている。
心筋トロポニンは心筋特異性に優れ,クレアチンキナーゼ(CK)やクレアチンキナーゼMB分画(CK-MB)では検出できない微小心筋傷害の診断が可能であることから,急性冠症候群の診断において重視されるようになった。特に,症状出現から6時間以内の非ST上昇型急性冠症候群では,初回心筋トロポニンの上昇がない場合に