診療支援
診断

■循環器疾患の最近の動向
筒井 裕之
(九州大学大学院教授・循環器内科学)


 循環器疾患は,高血圧,糖尿病,メタボリックシンドローム,脂質異常症,喫煙などの危険因子から,動脈硬化を基盤として心筋梗塞,さらに心不全・不整脈を引き起こす一連の心血管病の連鎖としてとらえられる。わが国では生活習慣の欧米化と人口の高齢化によって循環器疾患が増加している。循環器疾患の診断においては,従来からの症状・身体所見や心電図,胸部X線の重要性は変わりがないものの,超音波,CT,MRI,核医学検査などを組み合わせたマルチモダリティ診断による病態のより正確かつ詳細な把握が可能となっている。

 心筋トロポニンは心筋特異性に優れ,クレアチンキナーゼ(CK)やクレアチンキナーゼMB分画(CK-MB)では検出できない微小心筋傷害の診断が可能であることから,急性冠症候群の診断において重視されるようになった。特に,症状出現から6時間以内の非ST上昇型急性冠症候群では,初回心筋トロポニンの上昇がない場合にも1~3時間後,定性では症状出現後6時間以降に再検することが推奨されている。

 心筋血流予備量比(fractional flow reserve:FFR)は機能的虚血の診断に有用であり,狭窄部位ごとの評価が可能であるが,その測定には心臓カテーテル検査が必要である。FFRCTは,心臓CTデータから再現された冠動脈3次元モデルと,流体力学解析により算出された血流動態から冠動脈各部位におけるFFRを算出したものであり,冠動脈インターベンションの施行に必要な機能的虚血の診断に有用であると期待されている。

 心不全は「何らかの心臓機能障害,すなわち,心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果,呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し,それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」と定義されるが,一般向けには「心不全とは,心臓が悪いために,息切れやむくみが起こり,だんだん悪くなり

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