診断のポイント
【1】表1図に示す基準のいずれかを満たす患者に発症した肺炎である。
【2】市中肺炎と院内肺炎の中間に位置する肺炎である。
【3】表2図に示すような病態では,誤嚥性肺炎をきたしやすい。
緊急対応の判断基準
【1】重症例は,一般病床への入院あるいは集中治療室への移送を検討する。具体的には,患者年齢ならびに脱水,呼吸不全,意識障害,血圧低下の有無を総合して判断する〔日本呼吸器学会による重症度分類(A-DROP)を参考とする〕。
【2】集中治療の適応や積極的治療の施行は,患者の社会的背景や疾患の状態(終末期や老衰など),患者や家人の意思を総合的に検討して決定する。
症候の診かた
【1】高齢患者が多く,若年者の肺炎に比して,非典型的な症状をとることが多い。
【2】高齢者では,咳嗽や喀痰などの呼吸器症状の欠如や発熱がみられないこともある。
【3】意識障害や,「元気がない」「食欲がない」「倦怠感が強い」などの漠然とした症状を訴えることも多い。
【4】誤嚥性肺炎は,医療・介護関連肺炎の主体をなすものであり,摂食時のむせの有無や聴診上背部下部でのcoarse cracklesの有無に留意する。
検査所見とその読みかた
【1】喀痰検査
❶喀痰は得られないことも多く,得られたとしても,検出菌が肺炎の原因菌でないことも多い。また,誤嚥性肺炎では,常在菌と原因菌の判別は困難である。
❷そのうえで良質な喀痰が喀出されるようであれば,可及的抗菌薬投与前に,グラム染色や培養検査を施行する。入院例では血液培養も2セット提出が望ましい。
❸喀痰のグラム染色で,貪食像を伴う多菌種の存在は,誤嚥性肺炎を示唆する。
【2】血液検査:他の肺炎と同様,末梢血で白血球数の増加,CRPなどの炎症所見の上昇がみられる。
【3】画像検査:胸部単純X線写真で浸潤影が認められるが,誤嚥性肺炎では下葉背側に優位となる。陰影は胸部単純X線写真では描出され