診断のポイント
【1】社会要因(高齢者,社会経済的弱者,外国出生者)。
【2】医学的結核発症リスク集団(糖尿病,慢性腎不全,悪性腫瘍,免疫抑制薬投与)。
【3】微熱,盗汗,体重減少などの消耗性症状。
【4】慢性の咳嗽,喀痰。
【5】胸部X線写真での上葉,下葉S6の浸潤影。
症候の診かた
【1】発熱
❶肺結核では何日も継続する37℃台の微熱が多いが,結核性胸膜炎や粟粒結核では39℃を超える高熱で発症することが多い。
❷高齢者でははっきりしないこともある。
【2】咳嗽:慢性の咳嗽が肺結核の半数以上にみられ,社会要因や医学的結核発症リスク集団では,2週間以上持続する咳嗽は結核を疑うことが必要である。
【3】喀痰
❶白色の粘液性痰である。
❷結核病巣の乾酪壊死から誘導気管支を通して壊死物質が喀痰として排出され,結核性空洞が形成される。時に血痰や,空洞内の血管の破綻により大量の喀血を起こす。
【4】非典型例の注意点
❶全く無症状で排菌により感染を拡大する症例や,全身症状のみで呼吸器症状に乏しい症例がある。
❷高齢者の肺炎と肺結核の鑑別が困難であり,肺結核の診断の遅れが結核感染の拡大につながる。
検査所見とその読みかた
【1】血液・生化学検査:臨床検査所見は結核の診断や鑑別に有用ではなく,患者の全身状態や基礎疾患の評価として用いる。
【2】塗抹検査
❶患者の病巣から採取された検体を用いて最も迅速に診断できる方法である。
❷光学顕微鏡を用いるZiehl-Neelsen法と蛍光顕微鏡を用いる蛍光法があり,検出感度の高い蛍光法が推奨される。
【3】培養検査
❶結核菌の同定と薬剤感受性検査のために必須の検査である。
❷培養には,固形培地と液体培地があり,それぞれ小川培地と酸素感受性蛍光センサー法(mycobacterium growth indicator tube:MGIT)が広く用いられる。小川培地は安価でコロニー数や性状を観察でき,一