診療支援
診断

急性呼吸窮迫症候群
Acute Respiratory Distress Syndrome(ARDS)
田坂 定智
(弘前大学大学院教授・呼吸器内科学講座)

診断のポイント

【1】敗血症,肺炎などの基礎疾患(表1)。

【2】急性(おおむね7日以内)の経過。

【3】胸部X線やCTで両側性陰影。

【4】マスクなどによる酸素投与のみでは改善しない低酸素血症。

緊急対応の判断基準

【1】集中治療室で呼吸管理をはじめとする全身管理が必要。自施設での管理が困難な場合は高次医療機関へ搬送する。

【2】非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation:NPPV)で換気補助を行う場合,開始1~2時間後に改善傾向がなければ挿管管理に移行する。

症候の診かた

【1】特徴的な症状はないが,多くの場合,進行性の呼吸困難を訴える。ただし高齢者では呼吸困難の訴えが乏しく,意識障害や失見当識が前面に出ることがある。

【2】発熱や頻脈,頻呼吸を認めるが,これらは敗血症や肺炎,外傷など基礎疾患によって影響される。

【3】聴診では水泡音(coarse crackles)を聴取することが多い。

検査所見とその読みかた

【1】血液検査

❶特異的な所見はないが,CRPの上昇がみられる。

❷白血球は増多する場合も減少する場合もある。

【2】動脈血ガス分析:診断や重症度分類に必須である。

【3】胸部X線:両側性の陰影を認めるが,発症直後や高度の脱水を伴う場合には陰影が不明確なこともある。

【4】胸部CT

❶両側性の浸潤影またはすりガラス影を認める。陰影はびまん性とは限らず,重力の影響を受けやすい(図1)。

❷基礎疾患が敗血症などの間接損傷の場合,陰影は左右対称のことが多いが,肺炎などの直接損傷では左右差がみられやすい。

【5】心エコー

❶左心不全の除外に有用である。

❷下大静脈径と呼吸性変動から右房圧(中心静脈圧)を推定することができ,輸液管理に有用である。

確定診断の決め手(表2)

【1】急性発症(おおむね7日以内の経過)。

【2】胸部X線やCT上の両側性陰影(浸潤影

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