診断のポイント
表1図に診断基準を示す。
【1】血尿,蛋白尿,赤血球円柱,顆粒円柱などの腎炎性尿所見。
【2】数週から3か月以内に腎機能が30%以上悪化。
【3】CRP陽性などの全身炎症所見。
【4】高齢者が多いが若年での発症もある。
【5】腎生検にて半月体形成性壊死性糸球体腎炎像を示す。
緊急対応の判断基準
【1】表1図の基準により急速進行性腎炎(RPGN)が疑われた段階で,腎専門医への紹介を原則とする。
【2】全身の血管炎を伴う場合があり,肺出血や脳出血の合併など,緊急搬送を要する合併症の出現に十分注意する必要がある。
症候の診かた
【1】RPGNには特徴的な症候,所見はなく,倦怠感,食欲不振,体重減少などの全身性の非特異的症状を認めるのみの場合が多い。
【2】腎外症状:肺病変に関連する症状(咳嗽,喀痰,息切れなど)をもつ症例が多い。
【3】腎症状:尿異常,特に健診などで発見された尿異常がきっかけとなり,その精密検査で診断される例が増えている。
【4】発症年齢:若年者の発症もあるものの,圧倒的に多いのが60歳以降の中高齢者である。中高齢者で,最近出現した検尿異常と,上記の非特異的自覚症状をもつ患者をみた場合にRPGNを念頭におき,診療にあたる。
【5】急速な腎機能低下:短期間(数週から1,2か月以内)の腎機能の悪化の有無,およびその悪化スピードと炎症所見の確認が必要になる。
【6】随伴症状:RPGNはさまざまな一次性腎疾患,二次性腎疾患に続発して発症する場合があり,その場合には各原疾患の症状が随伴症状として認められる。
検査所見とその読みかた
【1】スクリーニング検査
❶腎機能の急速な悪化確認のための検査
■過去に検尿異常を指摘されたことのない患者に新たに検尿異常が出現した場合,血清クレアチニン検査を実施し,推算糸球体ろ過量(eGFR)の計算を行う。
■eGFRが60mL/分/1.73m2未満である場合,腎
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