診療支援
診断

悪性高血圧症
††
Malignant Hypertension
有馬 秀二
(近畿大学主任教授・腎臓内科)

診断のポイント

【1】拡張期血圧が120~130mmHg以上。

【2】眼底所見Keith-Wagener(KW)Ⅲ~Ⅳ度。

【3】腎機能障害を認める。

【4】全身症状の急激な悪化を示し,特に脳症状や心症状を伴う。

緊急対応の判断基準

 高血圧緊急症()を呈している場合には,入院のうえで直ちに経静脈的降圧治療を開始する。可能であれば高血圧専門医または腎臓専門医など関連する専門医のいる施設に搬送するのが望ましい。

症候の診かた

【1】高血圧:繰り返し測定した拡張期血圧が120~130mmHg以上を示す。血圧が異常高値であっても急性あるいは進行性の臓器障害がなければ緊急降圧の必要はない。

【2】視力障害:比較的急速に進行する視力障害,特に目のかすみを主訴に眼科を受診することが多い。また,その際に初めて本症を発見されることも多い。

【3】頭痛,悪心・嘔吐:強い頭痛,悪心・嘔吐などの症状は高血圧脳症による頭蓋内圧亢進(脳浮腫)の存在を示唆する。重症例ではけいれんや意識障害を伴うこともあるが,巣症状は比較的まれである。

【4】肉眼的血尿:腎細小動脈内で高度の微小血管症性溶血が生じて多量の破砕赤血球が尿中に漏出している状態で認められる。緊急性が高い場合に認める症候である。

検査所見とその読みかた

【1】スクリーニング検査

❶進行性の腎機能障害に伴い,血清学的検査では尿素窒素(BUN),クレアチニンなどが上昇する。尿蛋白は陽性で,時に2~3g/日に達することもあり,顕微鏡的血尿も伴う。

❷緊急降圧が必要となる重症例では,細小動脈の強い収縮および血管病変による血管内腔の狭小化により,赤血球の機械的な破壊や微小血管障害性溶血性貧血が生じる。その際には,破砕赤血球の出現,血小板減少,乳酸脱水素酵素(LDH)上昇,肉眼的血尿([症候の診かた]【4】)などが認められる。

❸腎機能障害の存在にもかかわらず低カリウム血症を認める場合

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