診療支援
診断

Alport症候群
Alport Syndrome
野津 寛大
(神戸大学大学院特命教授・小児科学分野)

診断のポイント

【1】幼少期発症の血尿および年齢とともに増悪する尿蛋白および腎機能障害。

【2】家族歴(ただし15%は孤発例)。

【3】難聴および眼症状を合併することがある。

【4】腎病理所見における糸球体基底膜の菲薄化およびびまん性網目状変化。

【5】遺伝子検査によるCOL4A3COL4A4またはCOL4A5遺伝子に変異の検出。

症候の診かた

【1】幼少期より続く血尿:ほとんどの場合3歳時健診における検尿や小学校1年生時の学校検尿で血尿を指摘される。通常,その際すでに蛋白尿を伴っていることが多い。

【2】感冒時の肉眼的血尿発作:具体的頻度は不明であるが,高頻度に認める。時に原因は不明であるが,緑色尿を認めることがあることが知られている。

【3】最も発症頻度の高いX染色体連鎖型男児ではほとんどの場合母に血尿を認める。また父が患者の場合,女児は100%Alport症候群または無症状保因者である。

【4】難聴および眼症状の合併:認める場合のほとんどが,X染色体連鎖型の男性患者または常染色体劣性の患者である。一方,X染色体連鎖型の女性患者および常染色体優性患者に合併することはほとんどない。

【5】確定診断には腎組織学的検討または遺伝子診断が必要である。

検査所見とその読みかた

【1】幼少期からの血尿および,その後蛋白尿を認めた場合Alport症候群を疑う。

【2】確定診断のためには腎病理学的検査または遺伝子診断を行う。

❶腎病理学的検査

電子顕微鏡による糸球体基底膜の観察:その際,基底膜にびまん性の網目状変化を認めた場合Alport症候群と確定診断を行うことができる(図1a)。ただし,若年者や常染色体優性患者ではびまん性の基底膜の菲薄化のみを認めることがあり,その場合は確定診断に至らない点に注意が必要である。

Ⅳ型コラーゲンα5鎖の免疫染色

正常例:糸球体基底膜およびBowman囊ともに陽性である(図1b

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