診断のポイント
【1】腎機能障害の診察では常に薬剤性腎障害を疑う。
【2】薬剤(処方薬・検査薬・市販薬など)の使用歴の把握に努める。
【3】薬剤ごとに発症機序や経過が異なる。
【4】原因薬剤は,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs),抗癌剤,抗菌薬,造影剤の4種で大半を占める。
【5】リスクファクター:高齢者,既存の慢性腎臓病,脱水,発熱,高度な動脈硬化,ポリファーマシー。
緊急対応の判断基準
【1】急性腎障害(→)での対応に準じる。
【2】進行性あるいは高度の高窒素血症〔尿素窒素(BUN),クレアチニン上昇)〕,高カリウム血症,うっ血性心不全,乏尿・無尿などがみられる患者:透析の必要性を検討する。
症候の診かた
【1】経過として,急性腎障害(→),慢性腎臓病(→)の両者を呈する可能性がある。
【2】腎不全・尿毒症症状:腎機能低下が進行すると,乏尿(→),浮腫(→),呼吸困難などの体液過剰症状や悪心・嘔吐,下痢,食欲不振などの消化器症状,まれに神経症状などを呈する。
【3】急性間質性腎炎(薬剤アレルギー):発熱,発疹,関節痛などの全身症状や腰背部痛を伴うことがある。
【4】慢性間質性腎炎:自覚症状がなく経過し,健診での腎機能検査で偶然に発覚する場合も少なくない。
検査所見とその読みかた
【1】障害部位として,尿細管を中心に機序により糸球体や血管が障害される。
【2】中毒性腎障害(急性尿細管壊死;シスプラチン,ヨード造影剤,アミノグリコシド系抗菌薬など):急性腎障害(→)の鑑別としてFENa>3%,超音波(水腎症なし)などをすみやかに行い,腎実質性腎障害であることを確認する。
【3】薬剤アレルギー(急性間質性腎炎;ペニシリン・セフェム系抗菌薬,ほか多種薬剤):急性腎障害(→),尿細管間質性腎炎(→)の鑑別として尿細管障害を確認する。確定には腎生検,尿中好酸球陽性(陽性的中率15~30%,偽陰性率55~80%)
関連リンク
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