診療支援
診断

巨赤芽球性貧血
Megaloblastic Anemia
日野 雅之
(大阪市立大学大学院教授・血液腫瘍制御学)

診断のポイント

【1】大球性貧血。

【2】胃手術歴。

【3】飲酒歴。

【4】投薬歴。

【5】神経障害。

症候の診かた

【1】貧血:一般的な貧血症状である動悸,息切れ,倦怠感,頭痛を自覚するが,徐々に進行することが多く,症状が出にくい。貧血による蒼白と軽度の黄疸によりlemon-yellow skinがみられる場合がある。

【2】神経症状(亜急性連合性脊髄変性症)

❶ビタミンB12欠乏による場合は,知覚,振動覚,位置覚に異常があるが,触覚,痛覚,温度覚は保存される。

❷進行すると歩行障害,Romberg徴候,痙性歩行を呈する。

❸精神症状(気分変容,認知障害,躁うつ,妄想,精神不安定状態)や自律神経障害(尿失禁,勃起障害,起立性低血圧)がみられることもある。

❹喫煙したときに急性の視力障害(tobacco amblyopia)が生じることがある。

【3】消化器症状:悪性貧血では萎縮性胃炎,食欲不振,胃部不快感がある。舌乳頭が萎縮して表面が平滑になり,疼痛を伴う炎症を起こすHunter舌炎は特異性は高いが,頻度は低い。

【4】その他:年齢不相応な白髪,脱毛,爪や皮膚の異常などもみられる。

検査所見とその読みかた

【1】スクリーニング検査

❶末梢血液検査

大球性貧血〔平均赤血球容積(MCV)高値〕,赤血球大小不同があり,無効造血のため網赤血球の増加はない。白血球や血小板も低下し,汎血球減少を呈する。

末梢血塗抹標本を臨床検査技師が目視検査している場合は,好中球の過分葉(6分葉以上の好中球が1%以上または5分葉以上の好中球が5%以上)がみられる(図1)。また,DNAの遺残物であるHowell-Jolly小体(図2)を認めることもある。

❷生化学検査:乳酸脱水素酵素(LDH)高値,間接ビリルビン上昇,総ビリルビン上昇,ハプトグロビン低値を認める。

【2】診断のための検査

❶ビタミンB12欠乏ではビタミンB12低値,葉酸

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