診療支援
診断

発作性夜間ヘモグロビン尿症
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Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria(PNH)
川口 辰哉
(熊本保健科学大学保健科学部教授・医学検査学科)

診断のポイント

‍ 表1に診断基準を示す。

【1】診断時年齢中央値45歳(10~86歳),男女差なし。

【2】血管内溶血に伴うヘモグロビン尿(図1)。

【3】血栓症や骨髄不全の合併。

【4】直接Coombs試験陰性の溶血検査所見。

【5】フローサイトメトリー(FCM)による発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)血球の検出。

緊急対応の判断基準

【1】溶血発作時の対応

溶血発作の誘因除去と急性腎障害(acute kidney injury:AKI)の防止がポイント

❷PNHでは慢性持続性溶血に加えて,感染症,外傷,手術など補体活性化の誘因が加わると溶血発作を起こす。

濃い赤褐色尿を認めたら直ちに来院を促し,腎障害が進行しないよう適切な対応をとる(補液やハプトグロビン製剤の投与)。

❹溶血発作の誘因除去に努め(感染症に対し抗微生物薬投与など),急速な腎機能悪化があれば早めに透析専門医にコンサルトする。

【2】血栓症への対応:血栓部位に応じた症候に対して診断や治療を実施(腹痛:肝静脈や門脈,神経症状:脳動静脈,胸痛:冠動脈など)。

【3】エクリズマブ治療中の発熱への対応:たとえ頭痛を認めなくても侵襲性髄膜炎菌感染症(invasive meningococcal disease:IMD)の可能性を考慮した迅速な熱源検索(血液培養など)と抗菌薬投与が必要である。

症候の診かた

 PNHの3主要病態である血管内溶血,血栓症,骨髄不全に関連した症候をまとめた。

【1】血管内溶血

❶肉眼的ヘモグロビン尿

PNHに特徴的な症候だが,診断時に認められるのは30~50%程度にすぎない。

尿の濃さは血管内溶血の程度を反映し,PNHクローンサイズ,赤血球膜上のCD55(DAF)/CD59欠損の程度〔完全欠損(Ⅲ型)が,不完全欠損(Ⅱ型)より壊されやすい〕,補体活性化誘因の有無など個別要因に規定される。

❷平滑筋調節障害:血管内溶

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