[Ⅰ]血友病
診断のポイント
【1】先天性血液凝固因子低下による出血傾向。
【2】X連鎖劣性遺伝疾患であり,主に男性に発生する。
【3】関節内出血が特徴的な出血症状。
緊急対応の判断基準
【1】頭蓋内出血,腹腔内出血,消化管出血,腸腰筋出血,コンパートメント症候群が疑われる重症出血では,血液凝固の専門家が診療する医療機関に緊急転送する。
【2】転送する前に,血液凝固因子製剤を十分量補充することが望ましい。
症候の診かた
【1】主な出血の種類と好発年齢を図1図に示す。
【2】乳児期後半頃より軽微な打撲による皮下出血が反復して出現し,幼児期以降は関節内出血(図2図)や筋肉内出血などの深部出血が多くみられるようになるのが特徴的である。
【3】慢性的に関節内出血を繰り返すと,関節変形と拘縮を生じ血友病性関節症となる(図3図)。
検査所見とその読みかた
【1】スクリーニング検査:出血時間や血小板数,プロトロンビン時間(PT)は正常であるが,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が延長する。
【2】凝固因子活性の検査値:健常者の平均値を100%として%で表現される。
確定診断の決め手
【1】確定診断:血液凝固第Ⅷ因子〔FⅧ(FⅨ)〕活性の測定を行い,40%未満の場合に血友病と診断する。
【2】臨床的重症度:凝固因子活性とよく相関しており,FⅧ(FⅨ)活性の程度によって,1%未満が重症型,1~5%未満が中等症型,5%以上が軽症型と分類される。
【3】軽症の場合:出血症状がほとんど認められず,何らかの観血的処置や術前検査時に,成人になってから診断されることがある。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】von Willebrand病(VWD):VWDでもFⅧが低下するため,von Willebrand因子(VWF)抗原を測定し基準範囲内であれば血友病Aと診断する。
【2】後天性血友病A:後天性血友病AではFⅧに対する自己抗
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