診断のポイント
【1】比較的硬いびまん性甲状腺腫。
【2】成年女性に多く,男女比は1:10~20。
【3】甲状腺自己抗体〔抗サイログロブリン(Tg)抗体や抗甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)抗体など〕が陽性。
【4】甲状腺超音波(US)検査での内部エコーの低下や不均一。
【5】約25%に甲状腺機能低下症。
症候の診かた
【1】甲状腺腫:典型例ではびまん性に,比較的硬く(弾性硬から石様硬)腫大する。大きさはさまざまで,萎縮して触知しないものもある。
【2】甲状腺機能低下症に陥ればその特徴的な症状と身体所見を呈する(→)。
検査所見とその読みかた
【1】抗甲状腺TPO抗体(マイクロゾーム抗体):本症に対する陽性率(感度)は82~85%。抗甲状腺マイクロゾーム抗体は凝集法で測定され,抗甲状腺マイクロゾーム抗体半定量(マイクロゾームテスト)とよばれる。
【2】抗Tg抗体:本症に対する陽性率(感度)が抗TPO抗体より高く93~97%。しかし凝集法で測定した場合は抗Tg抗体半定量(サイロイドテスト)とよばれ,陽性率は低く約46%。抗TPO抗体もしくは抗Tg抗体が本症で陽性になる率は約97%と高く,診断には両抗体を同時に測定する。
【3】阻害型甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体抗体(TSBAb):甲状腺腫のない甲状腺機能低下症の際に陽性になることがある。通常のTSH受容体抗体(TRAb)で代用可。
【4】甲状腺US検査:内部エコーは粗糙,不均一で,全体的または部分的に低エコーを呈する(図1a図)。
【5】FDG-PET検査:本症では甲状腺へのびまん性の取り込み亢進を認めるが,必ずしも悪性を示唆しない。
【6】穿刺吸引細胞診:甲状腺自己抗体陰性や甲状腺腫瘍が存在する場合もしくは悪性リンパ腫が疑われる場合に行われる。好酸性変性をした濾胞細胞やリンパ球浸潤を認める。
確定診断の決め手
表1図に日本甲状腺学会の慢性甲状腺炎(橋
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- 臨床検査データブック 2023-2024/サイログロブリン〔Tg〕《チログロブリン》 [保] 131点(包)
- 臨床検査データブック 2023-2024/甲状腺刺激阻害型抗体〔TSBAb〕《阻害型TSHレセプター抗体》
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