診断のポイント
【1】50~60歳台が多く,男女比は1:3。
【2】古典的には腎結石・骨折・消化性潰瘍を伴うが,最近は無症候性高カルシウム(Ca)血症が多い。
【3】高Ca血症と副甲状腺ホルモン(PTH)高値が併存する。
【4】超音波(US)検査で副甲状腺腫大を確認する。
【5】異所性副甲状腺腫にも注意する。
緊急対応の判断基準
【1】高Ca血症性クリーゼは,脱水と続発性尿崩症により生命に危機を及ぼすため,意識障害,高熱,頻脈を伴う場合は,すぐに集学的治療を行える施設に搬送する。
【2】脱水と続発性腎性尿崩症により病態が悪化するので,補液を第1に行う。
症候の診かた
【1】高Ca血症:PHPでは,臨床症状を伴わない無症候性が80%を占める。
【2】骨折:PTHによる骨吸収が亢進し,典型例では汎発性線維性骨炎と脆弱性骨折を発症する。
【3】尿路結石:高Ca尿症とともに尿路結石が増加する。
【4】消化性潰瘍:胃酸分泌過多による消化性潰瘍が増加する。
検査所見とその読みかた
【1】高Ca血症の診断:血清アルブミン濃度が4.0g/dLを下回る場合には,次の式を用いてCa値を補正する。
補正Ca濃度(mg/dL)=実測Ca濃度(mg/dL)+〔4-血清アルブミン濃度(g/dL)〕
【2】血清学的検査:PHPでは,血清Ca濃度に対して「不適切に」PTH分泌が保たれる。
【3】PTHはリン利尿作用が強いため,高Ca血症,低リン血症となる。顕性PHPでの感度は100%であるが,特異度は明らかではない。血清クレアチニン(Cr)は腎不全否定のため測定する。
【4】高代謝回転となるため,骨形成マーカー(オステオカルシン,骨型アルカリホスファターゼなど)と骨吸収マーカー(I型コラーゲンN末端テロペプチドなど)がともに増加する。
【5】尿生化学検査
❶尿中リン排泄の増加を認めるため,%TRP(尿細管リン再吸収率),TmP/GFR(尿細管リン
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